危機的状況が続く原発でさらなる異常事態が発生
東電の内部資料によれば、このとき、15日6時16分。テレビ会議システムで本店とつながっていた第一原発の吉田昌郎所長から、異常事態発生の緊急連絡が入った。当時首相補佐官だった寺田学衆議院議員は振り返る。
【寺田】勝俣会長と武藤副社長、政府側も私と総理と数人ぐらいになって話していたと思うんですけど。テレビ会議を通じて現場の吉田所長と話していたと思うんです。急に吉田所長の声のトーンが変わって、「緊急事態だ!」とお話をされて、一気に緊迫した雰囲気になったのは記憶しています。怒鳴り声のような感じでしたね。緊急事態で、多分大きな音がしたとか。とりあえず本店側と話すことを一時中断して、現場の様子を把握したいみたいなことを話されたと思います。
第一原発では、14日夕方から2号機の危機的状況が継続していた。14日夜から15日未明にかけて、注水は断続的に行われていたものの、原子炉の圧力は安定せず、炉にどの程度水が入っているのかも定かではなかった。
菅らが東電本店に乗り込んできた15日早朝、5時台でも状況は変わっていなかった。誰もが2号機の状況を案じている中で、さらなる異常事態が発生した。このときのやりとりを記録した東電の内部資料には、緊迫した報告が分単位で続いたことが記されている。
「2号機でボンという音がした」
06:16 「1F S/C(サプレッションチェンバー/圧力制御室)圧力0。減圧沸騰している模様」
06:18 「1F S/Cの底が抜けたか、先ほど音がした」
06:20 「1F 退避も考える」
06:21 「1F 現場の人間を引き上げる」
06:24 「1F メルトの可能性(所長)」
06:27 「1F 退避の際の手続きを説明」
伊藤哲朗内閣危機管理監は、このとき、東電本店へは同行せず、官邸地下の危機管理センターに残っていた。伊藤のもとへは、刻一刻と詳細な報告が上がっていた。
【伊藤】6時48分にですね、2号機でボンという音がしたという報告が入りまして。最小限の人員を残して、2F、福島第二原子力発電所の方に避難しますという報告が東京電力から入ってきたんですね。そうしたときに7時半にですね、東京電力からまた報告が入って、件名が「1Fから2Fへの退避について」という報告で。線量が落ち着いてきているため、ある程度の復旧要員50名程度を1Fに残す方向で検討していますという報告だったんです。
基本的に、「ある程度の要員は残すけれども、50名程度しかもはや残りませんよ」という意味での報告だったんで、いよいよ怖れていた事態が近づきつつあるなというふうに思いました。