「ウクライナ人はロシア語を話すと差別されるようになった」

かつてはロシアとウクライナは、どちらもソビエト連邦に属していた。そうした歴史もあり、市民は互いに同胞であるという意識が強い。ただ、国同士ではいまは関係性がおかしくなったと女性は感じている。

「8年前から続いていること……」

8年前の2014年2月、ロシアがウクライナ南部クリミアに軍事侵攻。前後して、ウクライナでは親ロシア政権が倒れ、親欧米路線の政権が誕生した。東部ではロシアが支援する親ロシア派武装勢力が政権と対立。ドネツク州、ルガンスク州の勢力がそれぞれ名乗ったのが、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」だった。2つの人民共和国の「建国」以降、紛争が続いているのだ。

30歳前後のロシア人女性2人から、ビザの発給停止に関する日本語の文章を読んでくれと頼まれた。「ロシアの関係者に対して、日本への入国査証の発給を停止」と読み上げると、

「今、パニック。ウクライナからも4月に来る予定だった男性がいる。予定通りに来れないんじゃないか」

そして、ロシア人から見たウクライナの状況をこう語った。

「8年前から、ウクライナでロシア語を使うと差別されるようになったんです。だいたいウクライナ人はロシア語をしゃべるんですよ。でも、ロシア語しゃべると、差別されます。だから、ロシア語をしゃべれないフリをする」

報道によると、2019年に発足したウクライナのゼレンスキー政権は、ロシア語の使用を制限する政策を打ち出した。たとえば、ウクライナ語以外で書かれた広告を禁じる法律などだ。プーチン政権の情報戦に対抗するためだという。

そうしたウクライナ政権には反発を覚えるものの、彼女たちは今回のロシアのウクライナ侵攻には賛同できないという。スマホで、ウクライナの地下鉄の駅に人びとが防空壕のように避難している写真をひらいて見せた。

「ロシアが侵攻した24日からずっと、ツイッター、フエイスブックなどのSNSを開くと、戦争の映像ばかり。仕事でいつもラジオを聞いてますが、ラジオでも戦争について語っている。ロシア人は、プーチンに賛成の人も結構いますが、それよりもっとたくさんの人が反対しています」