新人を能動的な部下に育てるには、どうすればいいのか。『自分の頭で考えて動く部下の育て方』(文響社)の著者である篠原信さんは「『グイグイ引っ張るリーダーになろう』などと思うかもしれないが、まずは新人をよく観察することが大切だ」という――。
会議でメモをとるサラリーマン
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「部下の姿」が見えているか

1.部下をよく観察し、仮説を立てる

新人の指導を担当することになったとき、多くの人が陥りがちなのは、「部下をグイグイ引っ張っていくリーダーになろう」とか、「部下から『ついていきたい!』と思われるリーダーになろう」とか、欲が出ること。そのために、毅然きぜんと振る舞おうとか、仕事がデキるところをみせつけようとか、気の利いた言葉を話してやろうとか、分からないことがあったら何でも親切に教えてやろう、とか、思うかもしれない。

これらの思いは、部下によかれと考えてのことだというのは分かるのだけれど、一つ大きな問題がある。「自分がどう振る舞うか、新人から自分がどう見えるかばかり考えて、部下が見えていない」こと。

あなたも覚えがあるはず。やる気にあふれた人なんだけれど、どうも空回りしている先輩や上司。そうした人は、部下から自分がどう見えているかが気になって、部下がいまどんな状態なのか、どんな気持ちでいるのかを落ち着いて見ることができていない。そのため、やることなすこと、かける言葉も上滑りしてしまう。

自分の見え方は忘れて、新人をよく観察する

自分が新人や部下からどう見えるかなんて、忘れてしまうこと。新人をどう指導すべきか、事前に勉強することは無駄にならないからやっておいていいけれど、それはあくまで部下を観察するための「目のつけどころ」を教えてもらえるだけと考え、新人を前にしたら、事前に勉強したこともいったん全部忘れ、虚心坦懐きょしんたんかいに新人を観察すること。そして新人が今、どんな状況に置かれ、どんな気持ちでいるか、「仮説」を立てること。

そのうえで、次に教えるべきことと、新人の現在の状態の間に、どんな架け橋となる言葉をかけたらよいのか、「仮説」を立てて試してみること。仮説通りうまくいったかどうかは、新人の様子を観察して見極めること。自分がどう見えるかなんかは忘れて、新人をよく観察する。これがまずは、新人教育する人の基本の心構えではないかと思う。