新人指導で大切なのは「能動感」

4.受動感ではなく能動感

「これはお前の仕事なんだから、徹夜してでもやり通せよ」と言われてやる仕事は、とてつもなくイヤな気持ちになる。なるべくゆっくり進めて残業代でもせしめてやろうか、と考えても不思議ではない。

他方、自分で企画した仕事で徹夜する場合は、「オレ、ここ3日くらいほぼ寝てない」と自慢したくなる。徹夜が苦にならず、楽しい。この差はいったい何なのだろう?

人間はどうやら、他人から先回りされてあれをやれ、これをやれと言われると、私の言葉で言う「受動感」が強まり、嫌気がさすらしい。しかし自ら能動的に動き、物事が変わっていくのを見るのはとても楽しい。自ら動くことで何らかの変化を起こせたと実感できる「能動感」を味わうと、それが勉強であろうが仕事であろうが、楽しくなる。

ならば、新人指導においても、いかに「能動感」を味わってもらうかが重要になる。すべてあなたが教えてしまうと、新人は能動的に動く部分がなくなり、「受動感」ばかりが募り、つまらなくなる。でももしあなたが「この作業、どうしてこうすると思う?」とか、「このボタンは押しちゃいけないのだけれど、なぜだと思う?」と問いかけると、新人は能動的に考え、答えざるを得なくなる。

大きな岩を受けとめるサラリーマン
写真=iStock.com/Nastco
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部下に「訊く」ことを意識する

新人は間違ったことを言っちゃいけないと思っていることが多く、すぐに「わかりません」と答えるかもしれない。その時、「そりゃ分からなくて当然、新人なんだから。なんでもいいから、もしかしてこれかも? と思いつくもの、言ってみて」と伝え、何を言っても軽く驚き、面白がってみる。すると、部下は何を言ってもバカにされず、自分が能動的に考え、答えようとすると上司が楽しんでくれることが分かる。すると、能動性が増す。その結果、能動感を味わいながら学ぶことができる。

部下が能動的に行動したり言葉を発したりしたとき、上司のあなたが、たとえ的外れでも「ほう! 面白い発想するね。他に思いつくことある?」と、否定せずに前向きに捉えるなら、新人の能動感が強まり、ますます能動的、自発的になる。

新人指導の間、どれだけ「能動感」を感じてもらえるかが、その後の成長を大きく左右する。能動的に動き、発言するなら、上司は少なくとも面白がってくれる、ということが分かれば安心し、能動性、自発性を身につけていく。これこそが、新人指導でいちばん大切なことかもしれない。

そのためには、教えることにあまり重心を置かず、部下に「訊く」(質問し、部下の話を聞き、面白がる)ことを意識したほうがよい。あなたが新人に「与える」ばかりにならないように。むしろ、新人があなたに、能動的に何かの言葉を発したり、働きかけたりするチャンスをたくさん与えること。あなたは新人に満たしてもらう「空虚」になること。