「新人はやる気がない」は本当なのか

3.誰もが働くこと、学ぶことが好き

大量の言葉(説明)を新人にぶつけて、新人を思考停止に陥らせたり、逆に教えなさ過ぎて立ちすくませたりすると、新人は当然、前に進めなくなる。そうした状態にしておいて「今年の新人はやる気がない」、「向上心が足りない」、「こちらの言うことを理解するだけの学力、理解力が足りない」と愚痴るシーンは、いろんな会社で起きていることらしい。いくら言葉を費やしても部下が動こうとしないことに業を煮やし、「人間は(俺とは違って)働きたくない生き物、学ぶことがキライな生き物なのだ」と考えてしまう人も、少なくないように感じる。

しかし私は違う見方をしている。人間は誰しも、学ぶことが大好き、働くことが大好き。赤ちゃんを見ていれば、立つという危険な行為を何度も繰り返し、達成しようとする。言葉も理解できないうちから言葉を話そうとする。「できない」を「できる」に変えようという意欲を持ち、「できる」に変えることができた時、強い達成感を味わう。それは、大人になっても同じ。

桜と若いサラリーマン
写真=iStock.com/monzenmachi
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「できる」が増えれば、新人は能動的になる

人を言葉で動かそうとするのではなく、自らの意欲で能動的に動くように、環境や言葉かけを設計すること。上述したように、すぐにマネができるようにスモールステップで見本を見せてもらえば、初めてのことでもやってみせることができる。そのとき、新人は新しいことが一つできるようになった達成感を覚えるはず。「できる」がどんどん増えていくと、楽しくなってきて、どんどん能動的になる。

能動的に学ぶ姿勢ができあがっていくよう、容易に達成できるスモールステップに、上司のあなたが作業を分解すること。そして一連の作業を無事やりおおせるようになった時、上司のあなたが「よし」と言うだけで、新人は強い達成感を覚えるはず。そうした達成感を与えられるかどうかは、指導内容をスモールステップに分解できるかどうかにかかっている。