“ラストレース”東京五輪6位の大迫傑、現役復帰の本当の理由
2月上旬、男子マラソンの元日本記録保持者・大迫傑(30)が現役復帰を表明した。2021年8月8日の東京五輪でのレースを「現役選手としてのラスト」と決めて、アフリカ勢など強豪ひしめく中、見事に6位入賞。その激走からわずか半年で“方向転換”したかたちになる。日本マラソン界に現れた時代の寵児に何があったのか。
メディア向けセッションに登場した大迫。現役復帰の気持ちを固めたのは、東京五輪から2カ月後の10月10日のシカゴマラソンを観戦したのが大きかったという。
「東京五輪後の9月末から1カ月ぐらい米国でのんびりすることができました。ちょっと走ってみようかなと思ったときに、そこそこ走ることができたんです。そういう状況のなか家族でシカゴマラソンを観たんですけど、東京五輪で8位入賞したゲーレン・ラップ選手が2カ月という短い準備期間で2位(2時間6分35秒)に入りました。カッコいいなと思うと同時に、僕自身も観てくれる人たちがワクワクしてくれるような場所に立ちたいなと思ったんです」
もう一度走りたい。体の底からわき上がってきたその熱量は自身が「行動しよう」というラインをはるかに超えていたという。
シカゴマラソンは大迫が18年に2時間5分50秒の日本記録(当時)を樹立した思い出深い大会だ。そのレースで昨年、優勝争いを繰り広げたのがゲーレン・ラップ(米国)だった。
ラップは12年のロンドン五輪は10000mで銀メダル、16年のリオ五輪はマラソンで銅メダルを獲得した選手。大迫が憧れたランナーであり、かつて所属していたオレゴン・プロジェクト時代のチームメイトになる。
「ゲーレンは目標であり憧れでした。身近な存在なので、2~3年前は脚の故障に悩んでいて、彼がすごくもがいてるところも見ています。僕よりも全然年上ですし、彼のような選手が活躍してるとやっぱり刺激になりますよね」
以前、大迫は「自分の力には限界があるのかなと思っています」と話していたが、ラップは5歳年上。35歳の米国人ランナーが東京五輪に続いて、シカゴでも好走した姿は“未来の自分”にも大きな可能性があると感じたのではないだろうか。