日本では年間2万匹を超える犬や猫が殺処分されている。それは野良犬や野良猫へ無責任にエサをあげる人が依然として後を絶たないからだ。不妊手術を受けられず、地域で繁殖してしまった犬や猫は、「死んでも仕方ない」のか。殺処分ゼロを目指して、現場で奮闘する人たちの声を紹介しよう――。(第1回)
運びこまれた野良猫
撮影=笹井恵里子
運びこまれた野良猫

エサやりは「殺処分される犬猫」を増やしているのと同じ

日本全国で、毎年多くのペットが捨てられている。

「飼えなくなったから」と保護施設(自治体により名称はさまざま。東京都では東京都動物愛護相談センター)に直接持ち込んだり、街中や山中にぽんと捨ててしまったり。捨てられた犬や猫はそこで繁殖する。

彼らの繁殖率はすさまじい。どちらも1歳を過ぎれば立派な成犬・成猫で、親子兄弟間でも子供を作る。環境省ホームページ「もっと飼いたい?」によると、オスメス2匹の猫を飼ったとして不妊去勢手術をしなかった場合、1年後には20匹以上、2年後には80匹以上、3年後には2000匹以上に増えると試算されている。

そうして地域で猫や犬が大量に繁殖すれば、やがて行政が保護することになる。保護期間がすぎて、引き取り手のいない動物たちは「殺処分」される。かわいいから、かわいそうだから、と不妊去勢手術をしていない街中の野良猫に餌を与えることがどれだけ罪深いことかわかるだろう。その行為は、殺処分される犬猫を増やしているようなものだからだ。

1年間で2700匹の不妊去勢手術を行った動物病院

2020年度(2020年4月1日から2021年3月31日)は、犬4059匹、猫1万9705匹が殺処分された。過去最少だが、毎日65匹が殺されていることになる。とりわけ目をひくのは子猫の殺処分だ。殺処分された猫1万9705匹のうち幼齢個体(子猫)は1万3030匹を占める。つまりは“望まれていないのに、生まれてしまった”子猫たちということだ。

だから殺処分の数を減らすには、地域の野良猫に「不妊去勢手術」を行い、望まれない命・子猫が生まれないようにする必要がある。

今年1月、茨城県石岡市で野良猫の不妊去勢手術を行っているという動物病院を訪ねた。動物病院といっても大きな看板が掲げられているわけではない。クリニックとしては正式に開設届が出されているものの、見た目は普通のアパートの一室だ。ここではおよそ2年前から、獣医師2~3人が月に数日だけ集い、野良猫の手術を行っている。2021年の1年間で、なんと2700匹の不妊去勢手術を行ったという。