管理職を目指さないのは女性の問題なのか

女性の管理職がなかなか増えない要因を、女性自身の「意欲」の問題と捉えている企業はまだ多い。だが、果たしてそれは女性側だけの問題だろうか。

私は長年、働く女性や企業の取材を通じて、女性たちが管理職を躊躇してしまうのは、躊躇せざるを得ない構造的な問題があると感じてきた。女性たちを取り巻く職場環境や家庭環境にこそ要因があるのに、そうした構造的な問題にまで踏み込んで対策を立てて、女性のキャリアへの意欲を引き出そうとしている企業は本当に少ない。

何が具体的に女性たちのキャリアへの意欲を阻害しているのか。その要因を探る上で一つのヒントとなるのが、2月に発表された21世紀職業財団による「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」だ。

この調査では、夫婦がただ働くだけでなく、それぞれがキャリアを自律的に考え、仕事も家庭も充実している夫婦を「デュアルキャリアカップル」と定義。26〜40歳の正社員同士で子どもがいる夫婦約30組にインタビューすると同時に、全国の約4100人の男女にアンケートをしている。

女性総合職の4割が「キャリアの展望がない」

調査を担当した同財団の山谷真名さんは、このテーマを選んだ問題意識をこう話す。

「企業の両立支援制度の充実、女性活躍推進法などで女性が働き続けることは可能になりましたが、出産や育児でキャリアが停滞してしまうマミートラック問題はなかなか解消されていません。出産後も女性がキャリアを目指すには何が必要なのか。女性側だけでなく、職場や男性側の要因も探りたかったのです」

調査からはいくつか興味深いデータが読み取れる。まず4割の女性が総合職でも「難易度や責任の度合いが低く、キャリアの展望もない」、いわゆるマミートラックの状態にあると答えている。

「マミートラック」の状態にある女性は全体で46.6%、総合職でも39.0%を占める(出所=21世紀職業財団「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」)
「マミートラック」の状態にある女性は全体で46.6%、総合職でも39.0%を占める(出所=21世紀職業財団「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」)

2009年に改正された育児・介護休業法によって短時間勤務制度が企業に義務化されて以降、約2割の職場でこの制度は利用されているが、利用者の内訳を見るとほぼ女性だ(雇用均等基本調査)。育児休業から復職した女性社員がこの制度を利用することにより、職場で期待されない存在となり、重要なプロジェクトから外され、結果として昇進や昇級を望めなくなったという事例は事欠かない。