そして夫たちの家事育児参加を阻んでいるのもまた上司なのだ。調査では「子どもがいる男性にも躊躇なく急な残業を命じている」上司がいる職場ほど、男性が毎日のように2〜5時間の残業をしている姿が浮かび上がってくる。

それでも例えば夫が保育園などへの「お迎え」を週に1日でも担当すると、妻側が「キャリアアップできている」と感じる割合が高くなり、夫が育休を取得すると妻のキャリアを優先する志向も高まる。

キャリア志向に変われた理由には、上司の存在や働き方の変化、家事育児の負担軽減が挙がった(出所=21世紀職業財団「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」)
キャリア志向に変われた理由には、上司の存在や働き方の変化、家事育児の負担軽減が挙がった(出所=21世紀職業財団「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」)

男女のキャリア格差を解消するポイント

新型コロナウイルスの感染拡大で、特に都心部の企業ではリモートワークが定着した。これまでリモートワークの制度はあっても、なかなか利用が進まなかった企業で、新しい働き方が定着したことが、夫婦のキャリアを考える上でも大きな転機になるのではないか、と山谷さんは指摘している。

「男性は妻にも好きなように仕事をしてほしい、そのためにもっと家事育児を負担したいとという思いはあるのですが、現実には職場の上司の働き方がそれを阻害しています。今回のインタビューでも在宅勤務の継続を望むのは男性のほうが多かった。女性がよりキャリア志向になるためにも、男性の働き方を変えるためにも、ポイントは上司。企業は今後中間管理職向けの研修をより充実させていくことが必要だと思います」

職場を変化させるには、「制度より風土、風土より上司」がポイントだと言われる。経営トップがまずダイバーシティ経営を目指すことは大事だが、どれだけトップがダイバーシティ経営を掲げても中高年の男性を中心とした中間管理職が「岩盤層」となって改革を阻む、という実態もよく知られていることだ。

中間管理職は何を変えればいいのか

だが、実際の管理職たちの中には、自分たちのどんな言動が若手や女性たちの意欲を減退させ、職場の変革を阻害しているのか、また何から変えていけばいいのかわからない、と戸惑っている人たちも多いのではないか。

こうした具体的な調査結果が出ることはそういった意味でも重要だ。女性のキャリアへの意欲を高めるにも、働き方を変えてもっと「家庭進出」したいと思っている若手男性を支援するにも上司の言動の影響は大きいことが証明され、「何を」変えればいいかのポイントが可視化されるからだ。中間管理職に向けた研修だけですべてが解決するわけではないが、こうした調査も含めて実態を知り、具体的に行動を変えるヒントを得ることは女性管理職を増やす一歩にもなる。

先日知り合った、ダイバーシティ経営に熱心に取り組んでいる愛知県の中小企業の経営者はこう話していた。「意識を高めるためには知識を高めることが必要だ」と。ぜひ一人でも多くの人にこの調査データを知ってほしいと思う。

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