男性のキャリアを優先する女性は5割強

結果的に同じ年数働いても、男性の方がより高いポジションに就いている。財団の調査では、勤続年数6〜10年で比較すると、男性は半数以上が「係長・主任及びそれ相当職」についているのに対し、女性は7割以上が一般社員のままだ。これが勤続11年以上になると、さらにその差は拡大する。男性で一般社員のままなのは2割弱に対し、女性は6割以上にも上る。

そうすると何が起きるか。比較的ジェンダーにおいては男女平等意識が強いとされるミレニアル世代でも、夫婦内でキャリア観格差が生まれてくる。男性は約4割が「お互いキャリアアップを目指していく」と答えているが、女性は「お互い」は3割弱にとどまる。その一方で、女性では「配偶者のキャリアを優先していく」と答えた人が5割強にも上る。

55.2%の女性が、自分のキャリアより配偶者のキャリアを優先すると答えた(出所=21世紀職業財団「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」)
55.2%の女性が、自分のキャリアより配偶者のキャリアを優先すると答えた(出所=21世紀職業財団「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」)

「キレイなキャリア」の夫と、そうではない私

調査を担当した山谷さんたちは、この結果に正直驚いたという。

「もう少しお互いがキャリアを尊重するデュアルカップル志向が高いと思っていましたが、想像以上に女性が自身のキャリアより配偶者を優先する人が多かった。同じ大卒、大学院卒という学歴で総合職同士であっても、その傾向は強い。男性のほうが給料が高い、昇進しやすいからという理由もあるが、女性は出産前から挑戦的な仕事をしていないとキャリアを諦めてしまう傾向があります」

山谷さんらがインタビューした中には、夫婦ともに大学院を修了し、社内結婚している夫婦もいた。子育てとの両立支援制度は整った企業なので、仕事を続けることのハードルは高くない。印象的だったのが、妻が言った「夫はキレイなキャリアに乗っている」という言葉だった。

この企業では、男性は入社後から管理職になるまでの道筋、経験すべき職場のジョブローテーションが決まっていて、夫はそうした「キレイなキャリア」に乗っていたが、妻側は「乗れていない」と感じていた。そうしたキャリア格差、経験の差は出産によって、というよりむしろその前から存在していたという。