今年1月、JR宇都宮線の車内で喫煙していた男を注意した高校生が暴行を受け、右頬骨骨折などの重傷を負った。作家の岩井志麻子さんは「テレビ番組でこの事件についてコメントを求められ、私は『暴行した男はかわいそうだ』と話した。その考えはいまも変わっていない。暴力でしか矮小な魂を修復できないのだろう」という――。
今も話題になる宇都宮線での暴行事件に私が思ったこと
電車の優先席に寝転がって、加熱式タバコを吸う男がいた。
昨今ではいろいろとためらってしまう状況下にありながら、一人の男子高校生が毅然と注意をした。
すると激高したその男はダウンジャケットを脱いで、上半身にびっしり入った入れ墨を見せつけながら、一方的に高校生を殴る蹴るして大けがを負わせた。
今年1月、JR宇都宮線で起きた暴行事件は、宮本一馬容疑者の傍若無人ぶりや凶暴さ、そして被害者のもはや勇敢といっていい言動により、今もって話題になり続けている。
「かわいそう」と発言した真意
私はこの事件のすぐ後、レギュラー出演しているテレビ番組でコメントを求められ、
「ずっとばかにされっぱなしだった、と鬱屈していた宮本容疑者は、一般の人たちばかりの電車の中なら、入れ墨を見せてタバコ吸ったら怖がってもらえる、と期待して乗ったんでしょ。そしたら、真面目そうな高校生に真正面から注意され、逆上してしまった。あまりにみじめで、もはやかわいそうなほど。なんとかかばってやりたい、とすら思う」
と発言したら、ネットニュースになって結構な反響をいただいた。
いやほんと、この手のやつが組事務所に殴り込むとか、本職より悪そうな半グレに絡むとか、聞いたことない。真っすぐに、といっていいほど、女性、子ども、老人、小柄な人、おとなしそうな人を狙っていく。