なぜアマゾンはネット通販の絶対王者になれたのか。戦略コンサルタントの桃谷英樹さんは「素晴らしい顧客体験を実現するため、データを用いた改善を徹底している。たとえば『表示が0.1秒遅れると、売上が1%減少する』という知見にもとづいて、表示速度を改善している」という――。

※本稿は、桃谷英樹『コンポーザブル経営』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

シリコンバレーにあるアマゾン本社
写真=iStock.com/Sundry Photography
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アマゾンが豊富な品ぞろえと低価格を両立できる理由

アマゾンのビジョンは「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」です。さらに「顧客をその人にとっての宇宙の中心に置いて考える」ことこそが、パーソナライズであると言っています。だからこそ、アマゾンは顧客の声を聞き、パーソナライズされた価値を発明しているのです。

アマゾンは企業としての4つのプリンシプルとビジョン、さらに価値基準・行動指針となる16のリーダーシップ・プリンシプルを徹底して実行しています。

図表1は創業初期のジェフ・ベゾス氏の構想に追記したものです。「品揃えの豊富さ」と「価格の安さ」。この2つの顧客体験こそが、初期のアマゾンにおけるビジネスモデルのベースになっています。同時に、以下に挙げる2つの基本的なビジネス構造が存在します。

ジェフ・ベゾス アマゾンのビジネスモデル

1つ目は、アマゾンのサービスにおける、顧客体験を提供するプラットフォームのサイクルです。まず、素晴らしい顧客体験を提供することで、顧客が増えていきます(トラフィック)。すると、サプライヤーにとってアマゾンのプラットフォームに対する魅力が高まり、多くのサプライヤーが集まり、品ぞろえ(セレクション)が充実していきます。

品ぞろえの豊富さは、顧客体験の満足度をさらに高めます。アマゾンのプラットフォームは、顧客にとっては体験を楽しむためのプラットフォームであり、サプライヤーにとって商品を提供するためのプラットフォームでもあります。