サンダースは「民主的社会主義者」を自称する

しかし、そもそもサンダースは社会主義者なのだろうか。というのも、彼は民主党の候補として立候補しており、どんなに平等性を求めるとしても、あくまでも民主党の枠内のように見えるからだ。

岡本裕一朗『アメリカ現代思想の教室 リベラリズムからポスト資本主義まで』(PHP新書)
岡本裕一朗『アメリカ現代思想の教室 リベラリズムからポスト資本主義まで』(PHP新書)

しかし、彼自身は自らを「民主的社会主義者(democratic socialist)」と呼んでいて、社会主義者であることを認めているように思われる。これはもちろん、彼が「アメリカ民主社会主義者(Democratic Socialists of America)」から支援を受けていることにも起因しているかもしれない。

たしかに、国民皆保険と医療費負債の帳消し、大学無償化と学費ローンの帳消し、財源のためにトップ1%の富裕者への課税といったサンダースの方針を見ると、社会主義的に見えるかもしれない。

しかし、これについては、クルーグマンが注意したように、「バーニー・サンダースは社会主義者ではない」と言うべきだろう。

重要なことは、バーニー・サンダースが実際には、通常の意味での社会主義者ではないということだ。彼は私たちの主要な産業を国有化し、市場を中央計画に置き換えようとは望んでいない。彼が称賛したのはベネズエラではなくデンマークである。彼は根本的に、ヨーロッパ人が社会民主主義者と呼ぶものである。――そしてデンマークのよう社会民主主義は、実際に、私たち自身の社会よりも自由な社会であり、生活するのにずっといい場所である。(The New York Times,2020
ワシントンD.C.の米国連邦議会議事堂と救急車
写真=iStock.com/Joel Carillet
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若者たちの“誤解”が支持を広げた

クルーグマンのこの批評によれば、「社会主義」をどう定義するかにもよるが、サンダースを通常の意味で社会主義と考えるのは難しいかもしれない。そのため、彼も指摘するように、「社会民主主義(Social democracy)」の方が適切であろう。

しかしながら、彼が「社会主義者」を標榜し、若者たちが「誤解」したことが、逆に彼に対する支持を広げた側面もある。もちろん、トランプのように、その「誤解」に乗じて、国民の恐怖心をあおり、批判することも可能である。したがって、「諸刃の剣」であることはたしかである。

逆に、サンダースが「社会民主主義者」として登場していたら、あまり革新性は目立たなかったかもしれない。その点、彼が「社会主義者」を自称したのは、ラディカルさを目立たせる意味では、評価できるかもしれない。

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