マーケットや、ファルワラと呼ばれる果物売りが引く車輪のついた屋台には、何種類ものマンゴーがぎっしりと並ぶ。あの有名なアルフォンソマンゴー以外にも、インドには数十種類ものマンゴーがあるらしい。

お店のひとに食べごろのものを選んでもらって、いろんな種類を食べくらべたり、凍らせてシャーベットにしたり、楽しみ方もたくさんある。特に近所のアイス屋さんで売っているマンゴーアイスは、母とわたしの大のお気に入りだ。シンプルだけど自然なマンゴーの甘味は、インドの猛暑を乗り切るためにはなくてはならない。

インド人にとっての「おにぎり」はサモサ

お昼は、学校がある平日なら、校内のカフェテリアで好きなものを食べる。サラダ好きにうれしいサラダバーもあれば、アメリカンなピザ、メキシコ特有のタコスや中東風のグリルドチキンである「シャワルマ(Shawarma)」のラップが出るときもある。カフェテリアのそとでケバブメーカーが回っていたのをはじめて見たときには、さすがにおどろいた。世界中から集まった生徒たちが通う学校なので、いろんな国や地域の食文化を楽しめるのだ。

もちろん、インド料理が出てくることもある。よくあるのは「サモサ(Samosa)」と呼ばれる、スパイスで味付けした芋や野菜を皮で包んで揚げた三角錐形のもので、日本人にとってのおにぎりのような手軽なスナックだ。カレーが出てくることもときどきある。

インド料理のサモサ、チャツネ添え
写真=iStock.com/viennetta
※写真はイメージです

また、うちの学校は韓国人生徒が多いからか、韓国料理のオプションがある日も多い。

あるとき、プルコギと書いてあったので頼んで食べてみると、舌を疑った。

あれ、インド来てからずっと食べてた鶏肉じゃない……。豚肉にしても色が濃い……。ということは……牛??

インドでは「幻」の食材を学校のカフェテリアで発見

半信半疑で家に帰って親に報告した。

「今日、学校で牛肉食べたんだけど」
「えー、豚肉でしょ~、さすがにビーフってことはないんじゃない」

親はなかなか信じてくれない。それもそのはず、ヒンドゥー教では、牛肉を食べるのはご法度だ。インドではほぼ幻のような存在で、こちらに来てから一度も食べたことも、売っているのを見たこともない。それでも、今日食べたのは、インドでよく牛肉の代替として使われるラムでもバッファローでもなかった。いや、確かにあれはビーフだったんだけどなぁ……。

そんなモヤモヤを抱えたまま、次の日に学校に行った。また昼にカフェテリアの列に並んでいると、いくつかの種類のサンドイッチが並べられたコーナーがあった。そこに、BLTやハムというのに混じって、「ローストビーフ」というラベルを発見した。

いや、ふつうにビーフって書いてるじゃん……。

こっちでは、牛肉のことは「Meat(肉)」などと隠語を使って表現するのが一般的で、それが現地の文化への尊重にもあたる。なのに、なんにも隠すことなくデカデカとビーフと書いてあるのが、あからさますぎてかえっておかしかった。