「うまいこと言った」は常に切り捨てていく

【安田】逆に言うと、目的外のことはやっちゃいけないのです。文章を書いていると、「話の流れからは浮いちゃうけど、この1文は入れたいなあ」みたいなこと、ありませんか? LINEで長文を書くときなんかも含めて。

——たしかにありますね。

そういう1文は、書いたほうが読者の理解が促進されると考えるなら入れるべきです。でも、「自分がうまいこと言ったから」とか「せっかく辞書で調べたのにもったいない」みたいな理由なら、それは読者のためじゃなくて自分のためですよね。こういう箇所は、常に切り捨てていきましょう。

ノートパソコンの上に置かれたメモ帳とペン
写真=iStock.com/Demianastur
※写真はイメージです

もちろん、論文の冒頭で自分の一族の歴史を延々と語るとか、メールに無関係な自社のアピールをゴテゴテ詰め込むとか、異性へのメッセージで自分に酔った言葉遣いをするとかは論外です。それらを書くことで自分自身は気持ちいいとしても、「読者の気持ち」にそぐわず、「書く目的」にも合致しない。なので書いてはダメなのです。

——厳しいですね……。

私自身、過去にけっこうやらかしているので。ゆえに分かるというか。今回の『ユニバーサル文章術』は、そういう往年の失敗にもとづく経験と、そこから得た教訓を落とし込んだ本でもあるんですね。

営業で「いつ来られますか?」はダメ

——この本はメールやウェブ記事だけではなく、異性へのLINEや婚活アプリの文章術など、「変わりダネ」の文章も扱っていますよね。ちなみに私、キャバクラでの勤務経験をもとに地元沖縄の夜職の事情をよく書いています。ちょっと変な質問ですが、例えばホストクラブやキャバクラのキャストが営業LINEを送るときは、どう書けばいいでしょうか?

【安田】なるほど……。まず、キャバクラの営業LINEを「書く目的」は、お客をお店に呼んでお金を落としてもらうことですよね。なので、まず明らかにダメな事例は「今月ピンチなんです。お店来られますか?」とか「次はいつ来ますか?」みたいな文面です。

——お金を落としてもらうのが「書く目的」なのに、「店に来て(=お金使って)とは言ってはいけないのですか?」

はい。確かに「書く目的」はその通りですが、「読者の気持ち」を想像してみてください。「お前、カネくれ(意訳)」と言われて、気分が良くなる人はあまりいません。そもそも、露骨に営業を感じさせるメッセージはうざいですよね。発信者の都合ばかりで、情報の受け手のことをまったく考慮していない身勝手なコミュニケーションです。勝手に家にポスティングされるチラシに通じるものがある。