「おじさん構文」が許されるケースもある
——「読者の気持ち」を考えれば、おじさんがスマートに女の子を誘うことも可能なのでしょうか? 過去の経験上、不快にならない誘い方をする人はほぼいませんでしたが……。
【安田】うーん。例えば、相手が寿司を好きな場合は「昨日、後輩に奢ったんだけど、この寿司屋すげえ良かったよ!」と書いて、1人2万円くらいの寿司屋のURLを送っちゃうとか? ここでのポイントは「後輩に奢ったんだけど」という一文です。よっぽど鈍感な人じゃない限り、女性はここから「あなたにも奢る」というメッセージを読み取るでしょう。
——たしかに、「昨日、後輩に奢ったんだけど、この寿司屋すげえ良かったよ!」には「連れてってください!」と返しますね。
「おじさん狼になっちゃうゾ」と比べたら、欲望を垂れ流さないきれいな誘い方だとは思います。
——本書では「おじさん構文」を厳しくダメ出しする一方、許されるシチュエーションもあると書かれていますよね。
ええ。例えば「ヤッホー! 由佳子ちゃんはおうちカナ? 大好きダヨ(ハート)今日ははやく逢いたいネ(ハート)」みたいなバリバリのおじさん構文のLINEメッセージを、65歳の山田清さんが送ったとして……。
——いや、無理です。無理。
でもこれ、相手の「由佳子ちゃん」が、おじさんの奥さんの山田由佳子さん(65)だったらどうでしょう? キモさはゼロで、シニア夫婦が仲良くて幸せじゃんで終わる話です。そして由佳子さんも「ありがとうキヨシくん、待ってるネ(ハート)」とか返事を書くと。
——かわいい会話ですよね。全然キモくない。
その表現の文化を共有している相手同士で送り合うなら、「おじさん構文」はぜんぜんアリなんです。相手が受け取って気持ちいい文章なら、それでいいんですよ。
キモいのは「おじさん構文」それ自体じゃなくて、不倫とかパパ活のワンチャンを求めて、文化を共有しない若い女の子を相手に、欲望ダダ漏れの文章を送るおじさんの姿であると考えたほうがいいでしょう。