「おじさん構文」はなぜキモいのか?

——それでは、どうすればいいでしょうか。

【安田】あくまでも一例ですが、あえて直接的に来店をうながさず、相手の自由意思にゆだねる(ように見えて行動をコントロールする)手法はどうでしょう? 例えば、常連客が前回の来店時に「◯◯屋のラーメンがうまい」と話していたとすれば、後日に「めっちゃおいしいです! ありがとうございます!」みたいなメッセージと、◯◯屋のラーメンをバックにした自撮り写真1枚だけを送る。

「店に来て」みたいな現実的な要求は一切言わないで、「◯◯屋のラーメン」という2人だけが通じる符丁を示して、行動をうながすわけです。お客さんも「俺のことだけ見てくれている」と感じられれば、たとえ営業でもそこまでイヤな気はしません。やがて、こちらのラーメン1杯への投資の何倍もお金を落としてくれるかもしれないですよ。

——本書では、痛々しい「おじさん構文」や、「◯◯ちゃんに逢いたい。君を想ってる」のような自分に酔っている文章も登場します。

ツイッターには、夜のお姉さんたちが、気持ち悪いお客さんが送ってきたメッセージのスクショを大量にアップしている「#クソ客がいる生活」っていうハッシュタグがあって、あれを見ると実例がたくさん分かりますね。おじさん構文のほかに「恋愛系のJ-POPの歌詞を送りつける」というパターンもあるようです。

不特定多数の前に流出しても恥ずかしくない文体を

——私も昔そうしたメッセージをもらったことがありますが、あれはきつかったです。ヘタに褒めると、もっと歌詞が送られてくるし、返信のしようがない。

【安田】あれがダメな理由は「これが俺だ、分かってくれ」みたいな姿勢ですよ。男性側が夜のお姉さんへのLINEを「書く目的」って、身も蓋もないことを言えば「プライベートで会いたい」「セックスしたい」じゃないですか。それならば、目標が達成できる情報発信を心がけないと。すくなくとも「読者の気持ち」を考えて、相手が受け取って不快にならない文体ぐらいは想像をするべきですよね。

文体や絵文字を使う量って各人や世代によって大きく違うのですが、普通にLINEを3~4通やりとりすれば、相手の基準みたいなものがだいたい検討がつく。相手が受容できるかを無視して、「31日夜はずっと暇カナ? おじさん狼になっちゃうゾ」みたいなコテコテのメッセージとか、J-POPの歌詞とかを送っちゃダメですよ。

「おじさん文章ジェネレーター」より作成
「おじさん文章ジェネレーター」より編集部作成

——うーむ。でも、自分に酔っている人が自己を客観視できるものでしょうか。

LINEやメールの文章は、スクショが不特定多数の前に流出しても恥ずかしくないことを書くことが大事ですよね。異性へのNG表現だけじゃなく、パワハラやモラハラ表現のNGラインの基準になると思いますが。家族や部下に送るメッセージでもこの点は注意すべきでしょう。