LINEなどで使われる中高年男性特有の言い回しは「おじさん構文」と揶揄されることがある。なぜ他の世代に不快感を与えてしまうのか。ライターの安田峰俊さんは「絵文字やポエムを使うこと自体がダメなのではない。自己陶酔的になっていて、受け取った相手の気持ちを考えていない点に問題がある」という――。(聞き手・構成=フリーライター・上原由佳子)
ビーチでスマホを使用している男性の手元
写真=iStock.com/kickimages
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「ユニバーサル文章術」とはなにか

——みんなのユニバーサル文章術 今すぐ役に立つ「最強」の日本語ライティングの世界』(星海社)では、LINEの返信の仕方やツイッターで一目置かれる書き方を紹介するなど、これまでの文章術の本とは一風変わった内容になっています。まず、「ユニバーサル文章術」とは、どういったものでしょうか。

安田峰俊『みんなのユニバーサル文章術 今すぐ役に立つ「最強」の日本語ライティングの世界』(星海社)
安田峰俊『みんなのユニバーサル文章術 今すぐ役に立つ「最強」の日本語ライティングの世界』(星海社)

【安田】日本語を母語とする令和の現代人なら誰でも読めて、誤解なく理解できる文章を書く技術、と理解してもらえればOKです。加えていえば「日本でちゃんと商業流通している新聞や雑誌に載っているような文章」というところでしょうか。

——安田さんは中国のルポを書くイメージが強いのですが、今回はなぜ文章術を?

私、今年でライター歴16年目なんです。マスコミに勤務したりライター学校に通ったりした経験はなくて、完全に叩き上げ。昔は無記名で中国と無関係なムック本や情報商材の原稿も書いていた。長編小説と詩以外はほとんどの文章を書いたことがあるはずです。

そういう事情もあって、日常生活で商店街のチラシとか学級通信なんかの普通の人が書いた文章を見ると、なんだか気になっちゃうんです。「ここは何か違和感あるな」「俺ならこうリライトするよな」みたいに考える習慣がありまして。

「損してんなあ」という文章が多すぎる

【安田】最近、たまに若手の作家志望者やライター志望者から「原稿を読んでください」みたいな連絡がくるんですよ。しかし、それらの9割くらいは、内容以前に「文章がやばい」。表記とか改行とか句読点の打ち方とか言葉選びとかタイトルとかいろいろやばいわけです。「ああ、損してんなあ」と思うことが多い。

——なるほど……。

ダメな文章について直すべき部分は、多くの人に共通点があるんです。それを言語化できないかと思って、「note」に書いたらよく読まれた。そのとき、旧知の編集者(星海社社長、太田克史氏)から「次著のネタない?」と尋ねられたので、本書の執筆に至ったわけです。

——ジャーナリストが書いた文章術の本だと、本多勝一さんの『日本語の作文技術』(朝日文庫)がありますね。現在でも、ライター学校や新人新聞記者の研修で、教科書になっている本です。

私も若いときに『日本語の作文技術』を読んでいます。句読点をどう考えるかをはじめ、日本語の感覚を鋭敏にするためにはいまでも読むべき本です。ただ、初版発行が50年ぐらい前なので、実は現代ではしっくりこない部分も多い。『日本語の作文技術』の日本語は、すでに令和の日本人にとって読みやすい日本語ではないんです。