ある表現を許容するかは、時代と文化によって変わる

キャンセル・カルチャーの怖いところは、時間をさかのぼって効果が発揮されることです。

石田光規『「人それぞれ」がさみしい 「やさしく・冷たい」人間関係を考える』(ちくまプリマー新書)
石田光規『「人それぞれ」がさみしい「やさしく・冷たい」人間関係を考える』(ちくまプリマー新書)

表現にまつわるリスクは、基本的には、これから発せられる言葉に対してかかります。しかし、キャンセル・カルチャーの網の目が細かくなると、過去のインタビューや表現をもとにしたキャンセルが発生します。たとえば、20年前に問題のある表現をしていたから、今の役職をおろされるといった発動の仕方です。

しかし、ある表現を許容するかどうかは、時代や文化によって変わります。その点を考慮せずに、過去の表現を今のルールに照らして裁き、キャンセルを発動させる社会には、危険性を感じざるを得ません。

そもそも、キャンセルをちらつかせて人を従わせる社会に、あまり良いイメージを抱くことはできません。過去もふくめ、一度の失敗をキャンセルに結びつける社会を、過ごしやすいと言えるのでしょうか。今の世の中で「生きづらさ」という言葉が流行る背景には、このような事情があるのです。

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