受験勉強の罠

しかし高等教育を受けさえすれば誰でも起業して成功できるわけではありません。

特に受験勉強にどっぷりはまってしまうことの危険性のひとつに、学ぶことが「受験勉強のスタイル」に固定されてしまいがちなことが挙げられます。

たとえば、テキストを読む・暗記する・問題集を解く、という学び方しかやってこないと、それが勉強の型として固定してしまい、それ以外の学び方を思いつかなくなります。

だから「自己投資」と聞くと、多くの人の頭には「資格取得」が思い浮かんでしまうのでしょう。

しかし実社会は、学校のテストや資格試験のようなクイズ大会ではありません。

そもそもテキストなど存在しない。問題も与えてくれない。正解はないし科目も範囲もない。カンニングも相談もOK。

それよりも、自ら問いを立てて課題を設定し、いまある知識を統合・組み合わせ、正解ではなく最適解を導くことが要求されます。

高学歴でも貧しい人の特徴

つまり高学歴でも貧しい人は、学んだ思考の枠組みを実社会で応用する習慣が養われていない、あるいは社会に出てからそういう姿勢で取り組んでいないように思います。

もっている知識を組み合わせ、あるいは新たに知識を得て統合し、より複雑な問題に適用できないのはなぜか。

おそらく与えられた問題を解くことに慣れ、自分で問いを発し探求し、解決方法を自らの頭脳で編み出し成し遂げるという経験をしてこなかったからでしょう(そういう意味で「東大クイズ王」みたいな番組が人気なのはちょっと不安です)。

学ぶとは、「自分が疑問に思ったことを探求する」というもっと能動的で創造的な行為のはずですが、受験では疑問をもつという行為自体が封印され、探求ではなく正解を導くことが要求されます。

そのため「進学のためだけの勉強」「受験に合格するためだけの勉強」という、根源的な思考力を磨かず青春時代を過ごすと、誰かが固めた理論をなぞるしかないという、受け身の姿勢になりかねないのです。