本当に患者に寄り添う「いい医師」とはどんな人なのか。医師の和田秀樹さんは「パソコン画面ではなく、顔を見て診察する医師、また、やたらと検査をすすめない医師も信用できる」という――。
※本稿は、和田秀樹『健康診断の数値におびえず楽しく生きる50の心得』(オレンジページ)の一部を再編集したものです。
検査データばかり見る医者の根本問題
どんなに専門の臓器にまつわる医学知識に詳しく、治療法や投薬などに造詣が深くても、患者をひとりの人間として診ることができない医者もいます。問診も触診もろくにしないで、パソコン画面に映し出された検査データだけから治療法や薬を決めてしまうようなタイプは、僕に言わせたらかなり危険な医者です。
こんな医者が育ってしまう理由は、日本の大学医学部の教育方針にあると思っています。
医療心理学講座などを開設している大学も一部にはあるようですが、基本的には、医学部の学生が患者の心理を学ぶことはありません。唯一、精神科の授業がチャンスなのですが、精神科の教授には臨床心理学の専門家が全国に一人もいないことが問題です。
医学部教育の問題点
ドーパミンと統合失調症の関係など生物学的な話や薬物療法の話ばかりでは、患者の心が置き去りにされ、検査データから理屈をこねくりまわして治療法や投薬を導き出してしまうような医者ができあがっても、不思議はありません。
もし医者の卵である若者たちが、カウンセリングや精神療法を専門とする指導者から学ぶ機会があれば、患者がどんなことに不安を感じるのか、どういった声かけで患者の気持ちがラクになるのか、そういった視点が育つはずです。
医学部の入試には面接が課せられているので、コミュニケーション能力の高い学生たちが集まっているはずです。にもかかわらず、卒業するころには患者と目も合わせないで、電子カルテばかりを見る医者になってしまう。患者の心理を教育しないということは、日本の医学界が、患者の気持ちに寄り添う必要性を感じていない証左といえるでしょう。

