IR担当者に上手に質問しよう

それともう1つ、個人がやったほうがいいのは、IR担当者に直接話を聞くこと。

IRとは投資家向けに経営状態や財務内容、今後の見通しなどについて広報することで、上場企業はどこも必ずIRの担当者を置いている。

ただし、誰もが知っている大企業の場合、なかなか個人には時間を割いてくれないかもしれない。毎日アナリストやファンドマネジャーの訪問を受け、しょっちゅう業績説明などをさせられているので、時間がないのだ。

こういった面から考えると、個人投資家はプロの投資家が投資しているような「誰もが知っている企業」の銘柄には投資しないほうがいい、という考えもある。

さて、実際にIRに電話をかけても、何を聞いていいのかわからない、という方も多いと思う。

IRの仕事をしている人が言っていた実話だが、個人投資家から電話がかかってきて一番聞かれることと言えば、

「今日、株価が上がっているんですが、なぜ上がっているんですか」
「株価が下がっているんですが、なぜ下がっているんですか」

という話ばかりだそう。

確かに、これではIRも頭を抱えてしまう。そもそも日々の株価の値上がり、値下がりなんて株式市場の需給によって左右される部分もあるし、下手なことを言えばインサイダー取引で大変なことになるから、何か知っていたとしても言えるわけがない。

企業のIR担当者に電話をかけて聞くなら、そんなことではなくて、もっと業績や財務内容について、もう少しだけ踏み込んだ質問をしたほうがいい。

そこで「決算書」を使うわけだ。

時間がない人は損益計算書をチェック

といっても、時間がない人は、「損益計算書」だけ見ればいい。

基本的に株価というのは、短期的には市場の需給バランスによって動くものだが、長期的には、その企業の業績を織り込んで、しかるべき株価が形成されていく。つまり、日々の売買で株価はどんどん変わっていくが、長期的には企業の業績によって、株価はしかるべきところに落ち着いてくる。

それを考えれば、長期的に大事なのは業績であることがわかるだろう。業績とは、もちろん売上高や利益、キャッシュフローのこと。だから、バランスシートよりも、業績がわかる損益計算書をチェックしよう。

タブレットでグラフを見ながら会議
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

損益計算書の構造は、次のようになっている。

売上高-売上原価=売上総利益
売上総利益-販売費及び一般管理費(販管費)=営業利益
営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益
経常利益+特別利益-特別損失=税引前当期純利益
税引前当期純利益-法人税等=税引後当期純利益

この流れで見ると、利益には「売上総利益」、「営業利益」、「経常利益」、「税引前当期純利益」、「税引後当期純利益」の5つがある。