たとえば、メーカーだったら、商品を作って売ったらそれがすべて利益になるわけではない。何かを作るための材料費(原価)や、営業や広告にかかったコスト(販売管理費)や、お金を借りていたらその利息も支払わなければならない(営業外費用)。

それに不動産を売ったりしたら、その年だけの特別な利益(特別利益)も入ってくる。そういうのを全部鑑みて、どの段階でどれだけ利益が残ったのかを見る。

必ず押さえてほしい“2つの数字”――売上高と営業利益

この中でも、売上高と営業利益は特に見ておいてほしい。

プロの投資家が投資するかどうかを判断するにあたっては、営業利益をベースにすることが多い。

営業利益は「売上高-コスト(売上原価+販管費)」。つまり、「売上高」から製品を作るのに必要な原材料費、商品の仕入れ代金の総額、サービスを提供するための費用の総額などの原価を差し引いた売上総利益を計算し、そこから販管費を控除したものが「営業利益」になる。

セクターによっては、経常利益で判断する場合もあるけど、プロの投資家は営業利益を軸にすることが多い。

ちなみに、「なぜ経常利益ではないのか」と考える方もいるだろう。

経常利益は旧ドイツ型会計基準に準ずる概念であり、アングロサクソン型会計基準が主流となった現在では、注目度が低下しているためだと思っている。

IFRS(国際財務報告基準)にも米国会計基準にも経常利益という概念はない。債権者への利払い及び元本返済に重きを置く概念から、株主を含むより広いステークホルダーを配慮した状況となったとも言えると思う。

計算機を使うビジネスマン
写真=iStock.com/Jirapong Manustrong
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プロは数字をどう使っているのか

ちょっとした裏話をすると、ファンドマネジャーが企業訪問をして、経営者や財務担当役員にいろいろ話を聞き、工場や店舗を見学して……、なんて話をすることがあるけど、あれには半分作り話が入っている。正直なところ、そんなに細かく聞いていない。

実際には、15分もあれば企業取材が終わってしまうケースもある。

長期投資になると話は違ってくるのだけれども、比較的短期の売買で、決算を見てトレードする時は、いちいち「御社のビジネスモデルの特徴は?」、「同業他社との差別化要因は?」なんてことは聞かない。

聞くとすれば「足元(の業績)はどうですか?」くらいのものだ。

それで、とにかく前述した売上高の進捗率をベースにして、予想以上に進捗率の高い企業を中心に、第3四半期での決算が公表されたあたりのタイミングを見計らって、第4四半期にかけて原価や販管費に大きな変動がないかどうかを各社の担当者に聞く。