墓石一基2500円で引き受け…「墓の墓場」が日本各地にある

無縁の存在を弔う風習は、たとえば2021年12月9日の本コラム「人間のお葬式以上の手厚さと重い空気…京王線沿線で『人形供養祭』が盛り上がる理由」でも紹介した。人間以外の動物やモノにたいする手厚い供養は、あまり海外ではみられない。日本固有の弔いの習俗といえる。

京都・化野念仏寺の無縁地蔵群
撮影=鵜飼秀徳
京都・化野念仏寺の無縁地蔵群

究極のモノ供養には「墓の供養」がある。墓は人間の弔いの主体となる存在だが、墓そのものを弔う場所、「墓の墓場」が日本各地にある。墓の墓場は、愛知県や岐阜県、京都府、広島県など複数存在する。

ややこしい話で混乱する人はいるかもしれないが、これは墓の継承者がいなくなったり、墓じまいしたりした墓石が一カ所に集められ、供養され直されているものだ。

例えば、広島県福山市の不動院では境内の一角に墓石安置所を設けている。同寺では、墓石一基2500円(巨石の場合は応相談)で引き受けている。墓石業者が墓じまい後の墓石を持ち込む。同寺では2001年以降、墓石供養を始め、現在の数は10万基ほどにも上るという。

各地に墓の墓場が生まれる背景には、増加する「改葬(墓じまい)」がある。厚生労働省「衛生行政報告例」によると、最新の調査である2019年度の改葬数は12万4346件。2004年度では6万8421件だったので15年前の水準の倍近くになっている。

四半世紀ほど前までは、墓じまいとは、墓地継承者がいなくなる無縁化を意味した。こうしたケースでは墓石は墓地の片隅などに移された。だが、近年では縁者がいるにもかかわらず、墓じまいするケースなどが目立つ。いまでは墓地継承者が墓の維持コストを嫌がり、永代供養に合祀したり、海洋散骨したりして、墓じまいすることが散見される。

こうして全国で無縁墓が増えている。現在では、無縁墓の多くは回収されてバラス(砕石)になり、道路舗装などで再利用されることになる。こう聞けば、虚しさが込み上げてくるが、インフラに再利用されるのはまだいいほうだ。

一部の悪徳業者が処分費用を浮かせるために不法投棄する事例も出てきている。2008年には淡路島で数千基もの墓石が不法投棄され、業者が摘発された。2019年にも福岡県北九州市で造成中の駐車場の地中に墓石53基を埋めたとして土木業者が逮捕されている。

墓までもが断捨離する時代になっている一方で、それを供養し続ける人がいる。そう思えば、この日本には一縷の救いが残されているようにも思える。

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