「動物に感謝し魂を鎮める」豚骨ラーメン店が豚を、ケンタが鶏を供養

こうした動物供養の習俗は他の地域にもある。

豚の供養の例では「豚骨ラーメン」で使われる豚の供養が存在する。2015年から始まり、例年10月2日(とんこつの日)、県内のラーメン店主が福岡県久留米市の水天宮に集まって、供養祭を実施している。

鶏の供養では日本ケンタッキーフライドチキン(KFC)が例年、東京と大阪の神社で「チキン感謝祭」を実施している。KFCのチキン感謝祭は、1974年から半世紀近く続けられる伝統的儀式だ。毎年犠牲になる2000万羽以上の鶏に感謝の念を捧げ、その魂を鎮めるのが目的である。

われわれが生きる上での食の提供とはいえ、動物の命を奪っていることには変わりない。中山通幽や豚骨ラーメン店主、KFCは「おかげさま」にたいする意識を、供養を通じて表現しているといえる。

ケンタッキーフライドチキンの入ったバケット
写真=iStock.com/skodonnell
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近年、フードロスに対する関心が高まっている。食べ残しや売れ残りなど、さまざまな理由でまだ食べられるのに捨てられてしまう食品の量は年間570万トンあるといわれる。各自がロスを減らすための意識と行動の変容が求められているわけだが、そもそも上で触れた畜魂の精神や、食べ物に対する感謝の気持ちがあれば、ポイ捨てなどでできるはずがない。

そういう意味で、鼻ぐり塚は「フードロスをなくす」運動の元祖的存在と言っていいかもしれない。