同じ「母の目線」で75歳の相談者にFPが話したこと

この話を聞いて筆者は思いました。「子供のことを考えなくていい」と言われて、「はいそうですか」といく場合もあるかもしれないけれど、いかない場合もあるだろう、と。なぜなら、自分自身にも身に覚えがあるからです。

理屈では子供を信頼して見守ればいいはず、とわかっていても、勝手に心配する気持ちが湧き上がってきて、その気持ちをコントロールできずに夜眠れなかったことは1度や2度ではありません。

筆者の体験はあくまで個人的なものですから、日頃、相談者に伝えることはないのですが、今回は、「実は私にもそういう苦しさを感じたことがあります」と言って、相談者とFPという関係から少し外れて、母同士の愚痴のこぼしあいのような会話をしばらく続けました。

夫は頼りにならないという電話での話も蒸し返されましたが、筆者には、夫は夫で、妻の中で常に湧き上がる得体のしれない不安や心配を冷静に受け止めて、暴走しないように配慮しているようにも感じられました。

その上で、グラフを見ながら次のような主旨のことをお伝えしました。

母(相談者)の気持ちはよくわかる。ただ、その気持ちのまま援助をすれば父母の家計は破綻する。そうなれば長女にかけなくてよかったはずの心配をかけることになる。長女は自分の生活を成り立たせているのだから、褒めてあげてもいい。資金援助ではなく、人生の先輩として一緒にお茶でも飲もうと誘ってみてはどうでしょうか。

長女の家計が本当に心配であれば、長女に、FPに相談する方法もあるということをお知らせくださいともお伝えしました。結局のところ、長女自身の家計は長女が考えるしかないからです。

筆者との電話と面談でのやりとりでどれだけ相談者が、自身の気持ちを整理でき、また長女への援助中止を決断できるかどうかは不透明です。ただ最後に、「また電話してもいいですか?」と聞かれことは、筆者にとって小さな希望の光です。

「次の一歩」につながってほしい。そんな願いを込め「いつでも、どうぞ」と言って、別れを告げました。

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