「心療内科」とは ~精神科、神経内科との違い~

今回、大阪で事件が発生したクリニックの診療の柱は「心療内科」だった。心療内科は「眼科」「産婦人科」などと古くからある診療科ではなく近年発達した医療分野である。似たジャンルの「精神科」「神経内科」などとどう違うのかという疑問を抱く人もいるだろう。

もともとの定義はこうだ。

心療内科:「精神的な要因から身体症状が現れる病気」を治療する分野。例えば「上司のパワハラを受けて会社で頭痛」「受験のプレッシャーで下痢」のような症状である。
精神科:「精神的な要因で精神症状が現れる病気」を扱う分野。「統合失調症」「躁うつ病」「アルコール依存症」などを扱う分野である。
神経内科:脳神経系の疾患を扱う内科の一分野。「てんかん」「アルツハイマー病」「脳梗塞」など「主に身体症状」を扱う分野である。

……と、カテゴリーは別の扱いだが、現実の病院では「心療内科」と「精神科」の住みわけは曖昧である。クリニックを開業する際に、患者が受診しやすくなるように「精神科」ではなくあえて「心療内科」「こころの(メンタル)クリニック」などと名乗ることも多い。

心療内科=「心の病を相談できる町医者」として、「うつ」「不眠」のみならず「夫婦喧嘩」「認知症」「不登校」「ひきこもり中年」など、あらゆるメンタルトラブル対応が要求される。なかには「産後うつ」として相談に乗っていたら実は「統合失調症」だった……のようなケースも存在し、深刻な症状のケースは精神科閉鎖病棟に搬送するよう対応を迫られることもある。

評判が良かった院長とクリニック

今回の大阪の放火事件後、インタビューでは「実直で優しい先生」「私にとってなくてはならない場所」「この病院のおかげで職場復帰できた」などと、多くの患者たちに慕われていた様子がうかがわれた。

病院ホームページを確認すると、院長は精神科専門医のみならず産業医資格もあり、「夜間22時まで診療」という「働きながら心の病を治したい患者」にとってはありがい病院だったのだろう。「大阪駅から徒歩8分」のようなアクセスな場所で、患者の自己負担額にも配慮するならば、クリニック立地が雑居ビルの一画にならざるを得なかったと推察される。