ネタの仕込みよりもキャラ作り

私自身は、雑談したくなければしなくてもよかろう、無理して会話で場の空気を生み出そうとしなくてもよかろうと考えているタイプの人間だが、実はそれほど雑談が苦ではない。むしろ、気楽に構えていられる。

要するに、「私はこういう人」と自分のキャラを決めておくと、雑談の返しが非常にラクになるのだ。とくにそのキャラが際立ったものであれば、何を言っても大丈夫ということになる。

その好例がマツコ・デラックスだろう。

たとえば、「笑いの絶えない家庭を作りたい」というありがちな決まり文句に対し、「毎日笑いが起きてる家庭なんて、この世に一軒もないよ!」などと毒づく。しかし、それは現実に対する鋭い指摘だ。

マツコさんはただ毒舌キャラというだけではなくて、誰もが言いたくても言えなかったことを言える代弁者キャラでもある。

あのキャラだからこそ「あの人が言うからおもしろい」「納得できる」というふうに支持を得るのだろう。

つまり、雑談で気まずくならない答え方の基本は、ネタの仕込みよりもキャラ作り。得なキャラを見つけてそれを演じることがコミュニケーションには大切で、その準備があれば、雑談で悩むこともなくなる。

インスタグラムやフェイスブックにアップする情報も、こういう自分を演じたいと思ってやっているわけで、いってみればキャラだ。

雑談もまさにそういうものであって、自分でこうありたいというキャラを作って演じればいい。いちいち真剣勝負のように真面目に対応したり、本当の自分をさらけ出す必要はないのだ。

オフィスで談笑しているビジネスマン
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声を掛けたほうも受け入れやすい

「最近どう?」と聞かれて、「離婚協議中なんだよ」「子どもが引きこもりでね」などと答えたら、気楽に声を掛けたつもりの相手はびっくりしてしまうに違いない。

それよりも、「いやあ、今朝もゴミ出し係ですよ」と恐妻家を演じたり、「今日は最高傑作のキャラ弁ができました」とイクメンぶりを披露するなど、キャラとして返されたほうが、声を掛けたほうも受け入れやすいうえに話にも乗っかりやすくなる。ひいては、互いにちょっとした雑談の時間を楽しむことができる。

最初はこうした一般受けしやすいキャラから入るのがベストだろう。食いしん坊キャラ、運動大好きキャラなどいろいろある。

そこから徐々にオリジナル感を極めていく。趣味の分野を前面に押し出してもいいし、○○王子、○○女王など得意なことを強調してもいい。「あの人は○○な人」という印象を浸透させていけば、やがて「得する自分のキャラ」を築いていけるだろう。