4コマ漫画のようなちょっとしたオチ
私の友人たちも、話を振られて自分の番になったら、今までで最もひどいできごとやちょっとした事件を、ささやかな笑える話に脚色して披露している。
「最近どう?」と聞かれたある友人は、たとえば、ボケはじめた母親がちょっとした騒動を起こしたことをこんなふうに話してくれた。
「まだらボケのおふくろが散歩するのを探偵気分でこっそりつけてみたんだよ。そうしたら、知らない家の庭に干してある洗濯物を取り込んでたたみはじめちゃった。働き者だからね? うちのおふくろ! その家の人もいい人でさ、おばあちゃんまた来てねなんて言ってんの」
介護をはじめたばかりだと、身内は親の言動の変化にショックを受けるものだ。問われるままに深刻に返してしまえば、周囲は心配し、同情しつつも何と言葉を掛けたらよいかわからなくなってしまうだろう。
だからこそ彼は、深刻に話そうと思えばいくらでも深刻になるところを、軽い笑い話とさえ思えるトーンにして語ったのであろう。その場がふっとなごんだのは言うまでもない。
このように、事実をすこしデフォルメし、4コマ漫画のように最後にちょっとしたオチがつくようにできごとを伝える。雑談をしていてありがたいと感謝されるのは、こういう返しができる人ではないだろうか。
雑談にリアルはいらない
つまり、雑談にリアルは必要ない。できるだけリアルから距離を置くことで、自分のキャラを作れるし、その場で軽やかに演じることができる。そうすれば事実を事実として伝える答え方だけでなく、深刻な話を軽くおもしろくまとめて返せるようになる。
話している相手がどんどん深刻になってしまうときは、「史上最悪ナンバーワンだね、一杯おごるよ」「それだけ悪運が続いたら、もう幸運しか残ってないんじゃない?」などと、あえてユーモアを交えて返してあげるのもいいだろう。
もしも自分自身が深刻ぶってしまうタイプだと気づいたら、ものごとのおもしろい面を捉えるクセをつけるとよい。自分の失敗や失態を軽い笑い話にまとめてみる、自分が思わず笑ってしまった話に似たことを自分の体験から探してみる、またそういう話がうまい人を真似てみるのもいいだろう。
▼リアルから距離を置いて、その場を演じるつもりで会話に参加する。