平成最後の紅白歌合戦に故郷・徳島から出場
この曲は前人未到の記録の数々を打ち立てた。
2018年2月12日に先行配信、3月14日にシングルCDとして発売された「Lemon」は、初週に出荷30万枚を突破し、デジタルダウンロード数75.2万とあわせてミリオンセールスを達成する。
ビルボードジャパン総合ソングチャート「HOT 100」では、この曲は2位のDA PUMP「U.S.A.」、3位の欅坂46「ガラスを割れ!」を大きく上回るポイント数で2018年の年間総合1位となった。
この年に発表が始まったオリコンの年間デジタルシングル(単曲)ランキングでも、レコチョクなど各種配信サイトのダウンロードランキングでも、DAMやJOYSOUNDの発表するカラオケランキングでも、TSUTAYAの発表したレンタルCDランキングでも1位となる。まさしくこの年を代表する一曲になった。
そして2018年の大晦日、平成最後の紅白歌合戦に、米津は故郷・徳島からの生中継で出場する。
テレビでの歌唱はこれが初めてだった。大塚国際美術館システィーナホールの荘厳な空間で歌い上げたこの出演をきっかけにさらに幅広い層に支持が広がり、年を越えて2019年もこの曲は異例のロングヒットを続ける。
音楽消費の細分化が進む中での「ヒットの復権」だった
ビルボードジャパン「HOT 100」では、この曲は2019年の年間チャートで史上初の2年連続総合1位。前述の各種ランキングでも2年連続1位と、主要年間チャートを席巻した。YouTubeに公開されたミュージックビデオの再生回数も数億回を超えた。
日本レコード協会の発表による2018年の音楽市場規模(音楽ソフトと音楽配信の売上高の合算)は前年比5パーセント増の約3048億円。3年ぶりのプラス成長となったが、5年前、10年前に比べて、全体の売上高が復活したわけではない。
それでも、音楽消費の細分化が進みヒットチャートから「本当のヒット曲」が見えづらくなっていた00年代後半や10年代前半と比べると、幅広い年代に支持された「Lemon」で米津が成し遂げたのは「ヒットの復権」だったとも言える。
◎キャリアの原点はニコニコ動画やボーカロイドシーン
「Lemon」のヒットは、インターネットが育んだ平成生まれの才能が国民的なポップスターとなったという世代交代の象徴でもあった。
米津は1991年、徳島県生まれ。幼少期の将来の夢は漫画家だった。音楽との出会いは小学校高学年の頃。00年代初頭にインターネット上で流行していたFLASHアニメをきっかけにBUMP OF CHICKENを知り、スピッツやASIAN KUNG-FU GENERATIONやRADWIMPSなど沢山のロックバンドに憧れた。中学に入学するとギターを手にし、友人を誘ってバンドを結成した。高校を卒業し専門学校に入学してからも曲を作り続けていたが、バンドはなかなか上手くいかない。
そんな最中に出合ったのが初音ミクだった。