日本の石炭火力の熱効率が世界でも最高水準である理由

ところで、なぜ日本の石炭火力の熱効率は世界最高水準にあるのだろうか。石炭は、世界で、年間およそ61億トン生産される。ただし、生産された国の中で消費される割合が高く、貿易量は約9億トン、約15%にとどまる(06年の数値)。

これは、石油と大きく異なる点であり、石炭をほとんど輸入に頼る日本は、世界の石炭ユーザーの中でも、相当に特殊な存在だといえる。

一方で、日本はかつての石炭産出国であり、一次エネルギーの自給率は61年まで50%を超えていた(06年の自給率は4%)。つまり、日本は、石炭を使いこなす技術を昔から磨いてきた。

石炭利用の技術をもつ国が、現在は石炭を輸入せざるをえないのであるから、必然的に燃焼効率を高めようとするインセンティブ(誘因)が働く。これが、日本の石炭火力発電部門が世界のCO2排出量削減技術の国際的センターになる理由である。

もう一つ重要な点は、石炭火力技術海外移転方式によるCO2排出量削減は、国内・真水方式によるCO2排出量削減に比べて、コストがはるかに安いことだ。

表2は、10年2月の時点で世界の主要国(地域)が掲げていた20年に向けたCO2排出量削減の中期目標と、それにかかわる限界削減費用を一覧したものである。