世界のイスラム教徒の数がキリスト教徒を上回る日
仏教は減退し、キリスト教は現状維持、イスラム教は繁栄の時代を迎える――。
世界三大宗教と呼ばれる仏教、キリスト教、イスラム教の勢力が転換点を迎えている。将来的にはイスラム教が世界で最大勢力を獲得する見込みで、このような宗教構造の変化は国際政治や生活習慣などにも影響を与える可能性がある。
現在、世界最大の宗教勢力はキリスト教である。世界の総人口73億人のうち23億人(人口比で32%)をキリスト教徒が占めている。次いでイスラム教徒が18億人(25%)、ヒンズー教徒が11億人(15%)、仏教徒が5億人(7%)、民族信仰が4億人(5%)だ。日本の神道は国際的な分類では、「民族信仰」のカテゴリに入る。ちなみに、無宗教は12億人(16%)である。
この宗教構造が、ドラスティックに変化する。
世界の宗教動静を調査している米調査機関ピュー・リサーチ・センターによれば、約40年後の2060年までにはイスラム教徒が30億人(人口比31%)、キリスト教徒が31億人(32%)とほぼ同等になり、その後はイスラム教が世界最大の宗教に躍り出ると見込んでいる。
数の上では仏教を上回っているヒンズー教徒も11億人から14億人(15%)に増える。ユダヤ教は1430万人から1640万人になると予測されている。
では仏教はどうか。仏教は5億人から4億6200万人(5%)に減少する。世界宗教の中では唯一の減退となる見通し。同時に無宗教者も3ポイントほど減少に転じると見込まれる。
こうした宗教構造が変化する背景には、世界人口の激増がある。世界の人口は、2015年の73億人から2060年の間に96億人にまで膨らむと予見されている。この人口増加傾向が高い地域と、イスラム教信仰圏とが重なるのだ。
たとえば、人口2億6000万人のうち9割近くがイスラム教徒というインドネシア。2060年代中頃には6000万人ほど人口が増える見通しだ。
また、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国では、民族信仰に加えてイスラム教とキリスト教を信じる割合が高い。この地域は合計特殊出生率が4~7という高水準にある。したがってこの地域では、キリスト教も爆発的に信者数を伸ばすようにも思われる。
だが、キリスト教は北アメリカやヨーロッパでは出生率が低下する傾向にあるため、伸び率を押し下げている。
もっといえば、キリスト教は米国や欧州先進諸国においては「教会離れ」「宗教転換」が進み、有史以来の危機的状況に直面している。