カマンベールとミモレットも燻製にすれば微かな苦味と風味が加わりひと味違う仕上がりに。溶けやすいカマンベールはアルミホイルで受け皿をつくっておこう(上段右)。今回燻製の指導をしてくれた「Bar LAG」の店主・坂本龍彦さん(上段左)と、酒飲み人生謳歌マガジン『酒とつまみ』でもライターを務める大竹聡さん(下段右)。燻卵は、常温に戻した卵を沸騰した湯で7分半ゆでて殻をむき、醤油と水1:1のつゆに一日漬けたものを燻製に。ナッツもいいぞ!

透明な蓋をした中華鍋に煙が満ちてきた。蓋をずらすと、それまで微かに漂っていた燻香が一気に鼻腔に流れ込む。


この匂い。これは男のロマンだね。なにしろ、燻すというほんのひと手間で、変哲もないチーズが、上等なアイラモルトを一層旨く感じさせてくれるのだ。

しかもここはバーじゃない。友人の自宅マンションの屋上である。昼間から一杯やるときのための最高の酒肴づくりを実践しようということで、日曜日の午後に集結したのだ。

銀座の「Bar LAG」のオーナーバーテンダー、坂本龍彦さんという強力なゲストもお招きしている。この人は、バーで客に供するための燻製を試行錯誤しながら模索してきた達人である。

「スモークチップから煙が出てきたら燻し始めて、弱めの中火で10分くらいでしょうか。目で見ながら、きつね色になるちょっと手前くらいが、止め頃です」

完成間近のスモークチーズを覗き込みながら、坂本さんが教えてくれる。その、実に旨そうなチーズの照り具合を見ながらさっそく一杯。坂本さんが、店名もこの酒の名前に因んでつけたという“ラガヴーリン16年”をグラスに注ぐ。

「飲み方はどうするべきですかね」
「ストレートでしょうね、やはり」

これもロマンである。

加水するにしても常温の水をちょいと加えるくらいにとどめ、マックスでもウイスキーと水の比率は1対1まで……。坂本さんと協議した結果、そのあたりを男のロマンの基準と定めた。