国や文化で悪夢のパターンにちがいはない
【先生】共通する典型的な夢はだいたい一致している。そもそも、ネガティブな夢のほうが記憶に残りやすい。たとえば日本人の大学生の悪夢でよくでてくるものトップ10は、「落ちる」「追いかけられる」「遅刻する」が必ず入ってくる。あとは、家族や恋人とわかれたり、縁が切れるという夢ね(注4)。
そして地震、洪水、火事という災害も入ってきますね。ヘビやクモなど、怖い動物がでてくるのは直接的でわかりやすいけど、人間関係がもつれたりする夢も、背景に「共同体で友好的な関係性をたもちたい」という願望があるとすれば、根っこの部分はやはり「生存欲求」にいきつきそうだけど……どうなんだろうね。
時代をとおしてテーマが変わらなければ、進化的価値がありそう。たしかなことはわからないけど、家をもったあとに火事にあう夢をみたりするというしね。悪夢の典型パターンに「遅刻」があるのも深読みすれば、現代社会における社会的生存の背景に他者との良好な関係性の保持があるからかな。原始時代でも「いまから狩り(仕事)にいくぞ」っていってるのに、遅れたら仲間外れにされちゃうだろうしね(笑)。みんなの力をあわせてやっと倒せるマンモスなんかは、ひとりきりじゃ太刀打ちできないもんね。
国や文化でそれほど悪夢のパターンにちがいがないのは、やはりそのあたりに理由がありそうね。「人間だれしもひとりでは生きていけない」という事実だけは、時間と空間を超えた共通事項。この一点を起点に夢は形成されているんじゃないかな。ヒトは集団のなかで生きる動物。程度の差こそあれ、生存はなんらかの要因になっていてもおかしくないよね。