「年末調整」の季節がやってきました。控除をたくさん受けるほど、税金が多く還付されます。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「扶養家族の申告で見落としがちなのが、親の存在です。別居している70歳以上の両親に定期的に仕送りしているというケースでは96万円が控除されますから、かなり大きな負担軽減になります」といいます――。
電卓
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年末調整の仕組みをおさらい

会社員や公務員はお給料やボーナスから税金が天引きされていますが、これは、想定される年収から大まかに計算された概算の額。実際には昇給や残業代、業績に応じたボーナスなどで年収が決まるため、想定した年収とは差があるのが普通です。また年の途中で扶養家族ができたり、扶養家族が減ったりすることもあり、税額に影響することもあります。

こうしたことから、日本では、ざっくり計算した税額を「源泉徴収」という形で給与などから天引きし、年収などが確定する年末に、「年末調整」で精算する、という手続きが行われています。

税額は、収入から各種の控除を引いたあとの「所得」に対して課税されるため、控除をたくさん受けることが、税の軽減に繋がります。生命保険料控除など、おなじみの控除のほかにも、様々な控除があり、該当するものを漏れなく申告することが大切です。意外と忘れがちな控除について見ていきましょう。

なお、令和3年の年末調整では、申告書について押印の義務がなくなりました。

令和2年に新設された「ひとり親控除」

シングルマザー、シングルファーザーの人は、「ひとり親控除」という控除が受けられます。

離婚や死別によってシングルになった人には、従来から「寡婦(夫)控除」があり、所得から一定の額が控除されていました。しかし、シングルマザーとシングルファーザーで控除の内容に差があったほか、未婚の場合には控除がありませんでした。そこで、その格差を解消するために、令和2年に「ひとり親控除」が新設(寡婦(夫)控除の改組)されたわけです。「ひとり親控除」では、それまで対象外だった未婚のひとり親も対象となり、控除額は男女の別なく35万円です。

ひとり親控除の対象になるのは、所得が500万円(給与収入677万7778円)以下で、生計を一にする子(総所得金額等が48万円以下)がいること。また住民票の続柄に「未届の夫」「未届の妻」など事実婚の記載がないことも条件となっており、事実婚の状態にある人は対象になりません。