カローラの復活に秘められたヒント

しかしながら、中国で発売されたクラウン・ヴェルファイアをそのまま日本に導入することはないだろう。まずヴェルファイアという車名はすでに存在しており、またヴェルファイアはアルファードよりスポーティなイメージであるためクラウンとの親和性が薄い。

中国のクラウン・ヴェルファイアもアルファードよりスポーティな装いである。それが中国人のニーズに合っているのだろうし、クルーガーと共にまだ中国ではブランドイメージが確立していないクラウンに若々しいイメージを与えたいのかもしれない。

日本でクラウンブランドを冠する場合は、ブランドイメージにふさわしくよりフォーマルで、かつベースは同じとしても既存車種とは明らかに異なるデザインとしなければならないだろう。

トヨタは、かつて圧倒的な販売台数を誇りつつも2017年には12位にまで落ち込んでいたカローラを、前モデルとはまったく異なるイメージのモデル導入でユーザー層も一新させ、2020年には3位に復活させることに成功している。

今までの流れに沿ったモデルとするのではなく、古くささも感じられるようになってしまったブランドを元のポジションに戻すためのモデルチェンジを行ったのだ。さらに2021年には現在の売れ筋であるSUVもカローラブランドに加えている。

トヨタはカローラとクラウンのブランドは絶対に死守する

トヨタにとって、カローラとクラウンはトヨタを代表し象徴するまさに「魂」というべきブランドなのだ。今まで数多くの歴史ある車種ブランドが消滅し、現在の1チャネル体制ではさらに整理が進むかもしれないが、長年にわたってトヨタを代表するブランドであり続けたカローラとクラウンは絶対に死守するだろう。

山崎明『マツダがBMWを超える日』(講談社+α新書)
山崎明『マツダがBMWを超える日』(講談社+α新書)

存続させるだけでなく、カローラのリポジショニングと同様に、日本を代表する高級車としての存在感を維持強化するようにクラウンを変化させていくだろう。

カローラはグローバルブランドだが、現状では事実上国内専用ブランドであるクラウンも、すでに導入している中国市場などトヨタブランドの高級車のチャンスのある市場では、海外展開を推し進めていくのではないだろうか。

海外での主力はSUVとミニバンになるだろう。海外でのクラウンは日本におけるイメージとは違ったイメージのブランドになると思われる。

将来的にはそのイメージが日本に逆流することになるかもしれない。そしてその新しいブランドイメージこそが、トヨタが最終的に目指している新しいクラウン像なのかもしれない。

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