「今、解約約すると30万円も損します、どうしたらよいですか?」
【Aさん】んー、たしかに。しかも全くあり得ないとは言えない為替レートですね。こうなったらそのまま預金においておけばよかった! ということになるわけか。でもそういえば、営業担当が言っていたのは米ドルで受け取ることもできるから65歳時点でたまたま為替レートがよくない時は米ドルの預金にしておけばよいとのことでした。
【藤原FP】いつまで米ドルでおいておくことになるのでしょうか。使いたい時に使えないという事態も想定できそうですね。流動性がさらに失われ、自分のお金なのにコントロールできない残念な状況になるリスクもあるわけです。
【Aさん】そうか~。う~ん、そこまでは考えていませんでした。
【藤原FP】販売する側も苦しい部分ですよね。為替ほど長期的な先読みが難しいものはないので。かといって無責任な販売は許されませんので、きちんと洗いざらい説明すべきですよね。残念ながら、この保険商品はAさんにとっては使うべき道具ではないものと思われます。不必要な「保障機能」が付いているし、肝心の「貯蓄機能」も十分ではない。将来米国に移住したり、毎年旅行したりしてドルを使うようなニーズもないでしょうから。
【Aさん】え~? 今(加入1年、1万2000ドル=132万円払い済)、解約すると30万円も損するんですけど、どうしたらよいですか?
【藤原FP】結果オーライを天に祈りつつ払い込み続けるか。潔く解約して他の手段で挽回することを考えるか。どちらかの選択になりますね。
販売側の売り文句に左右されず「トータルリターン」を把握すべき
【藤原FP】以上が、Aさんと私とのおおまかなやり取りです。
これはよくあるケースです。現在はアメリカの金利もいわゆる「コロナ前」の水準よりも一段と下がっていますので、過去のように保証利率3%を超えるような商品設計はできない環境になっています。となると「貯蓄機能」の充実は困難なのです。
それでもAさんの事例のように「2%の保証利回り」を前面に売り込まれるケースが後を絶ちません。「返戻率116.7%」などという数字を見せられるとなんだかよさそうな気がしてしまうのも無理もない話です。
——いやー、これはリアルな話ですね。Aさんのような人はたくさんいると思われます。同じような目に遭わないためにはどうしたらよいのでしょうか。
【藤原FP】そうですね。基本的には保険商品で「貯蓄機能」を期待するのは、今の金利情勢では難しいと思ったほうがよいでしょうね。Aさんが15年前と10年前に契約した2本の米ドル建て終身保険は実質利回りも3%近くあり、ある程度想定される為替リスクを吸収できるレベルなのでそのまま活用できるものかと思われます。
——それに「保障機能」が付いているかどうかも確認すべきポイントですね。それにかかるコストが実質利回りの足を引っ張るってことですものね。
【藤原FP】そうです。そして、販売側の売り文句に左右されず、冷静に「トータルリターン」を把握すべきです。「トータルリターン」は「払い込む保険料」(元本)と「受け取る給付金や返戻金」を比べて増える差額(運用収益)を契約期間(運用期間)で複利の利回り計算をすることによって得られます。
外貨建ての場合は、払い込む額も受け取る額も必ず円に直して計算します。これは自分自身ではなかなか計算しきれないと思うので、商品販売をしない中立的な立場のファイナンシャルプランナーに相談するのが早いと思います。
合言葉は、『最低保証利回り』や『解約返戻率』に惑わされるな!です。
——自分の立場に立ってくれる専門家を知っているのといないのとでは、これからの人生を乗り切っていくのに差が出ますね。自分の財産は自分でしっかり理解しながら管理するってことが大事なんだと改めて思いました。次回は「会社員とフリーランス、立場によって違う賢い保険の入り方」について、お話を伺います。ありがとうございました。