サントリーHD・新浪浪剛史社長の「45歳定年制」発言が物議を醸している。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「ホンダ、パナソニックなどが実施した大規模な早期退職者募集では対象者にキャリア支援もするとうたっているが、つまりはリストラ。新浪社長の発言は、『もう愛社精神はいらない、会社に寄りかからずに45歳でヨソに行って』といった経営者の本音を代弁した形だ」という――。
サントリー新浪社長の「45歳定年制」発言の真意とは何か
「45歳定年制にして、個人は会社に頼らない仕組みが必要です」
9月9日、経済同友会のセミナーにおいての新浪剛史・サントリーホールディングス社長の発言が波紋を呼んでいるが、その前後にも、他の日本有数の大企業が45歳以上をターゲットにした「早期退職者募集」が報じられていた。
8月6日にはホンダが今春に募集していた早期退職優遇制度に2000人超が応募していたことが明らかになった。対象となったのは55歳以上64歳未満の国内正社員だ。
8月12日には大和ハウス工業が45~54歳かつ勤続10年以上の社員を対象に早期退職募集を実施すると発表。退職日は今年12月31日の予定だ。
そして9月25日、今度はパナソニックが7~8月に募集した早期退職優遇制度に1000人超の社員が応募し、9月30日に退職したと発表した。
新浪社長は「45歳定年制」発言の翌日に「クビ切りをするという意味ではない」と釈明。その真意について「45歳は節目であり、自分の人生を考え直すことは重要。早い時期にスタートアップ企業に移るなどのオプション(選択肢)をつくるべきだ」と説明している。
企業が早期に新陳代謝を進められる環境の必要性を訴え
45歳発言の前日には「国は(定年を)70歳ぐらいまで延ばしたいと思っている。これを押し返さないといけない」と述べ、企業が早期に新陳代謝を進められる環境の必要性を訴えている。
新浪社長は、個人に対し、自分のスキルの棚卸しや学び直しによって高度な仕事に就けるように備えるべきというキャリア自律を促す半面、これからの企業は“45歳を節目”に社員のセカンドキャリアを支援し、人材の入れ替えによる活性化の必要性を説こうというわけだ。
ちょっとわかりづらいが、要するに「早期退職優遇制度」が新浪社長の提唱する“45歳定年制”の具現策だろう。