高騰するエネルギー価格

ヨーロッパで今、エネルギー危機が起きている。欧州連合(EU)27カ国のエネルギー価格は8月、消費者物価ベースで前年比+11.0%まで上昇が加速した(図表1)。先行指標となる卸売物価ベースのエネルギー価格はさらに強いピッチで上昇が加速しており、歯止めは一向にかかりそうにない。一体なぜ、こうした状況に陥ったのだろうか。

EUのエネルギー価格
出所=EU統計局

まずは急速な景気の回復に伴い、エネルギー需要が急増したことがある。4-6月期の実質GDP(国内総生産)は前期比+2.1%と、いわゆる「行動制限」が緩和されたことに伴って力強い成長を記録した。7-9月期以降、景気の回復テンポは鈍化すると予想されるが、こうした景気の急回復がエネルギー需要の急増につながった側面は大きい。

より重要な要因は、ヨーロッパが推進する「気候変動対策」にある。ヨーロッパは石油や石炭などを用いる従来型の化石燃料による発電に替えて、再生可能エネルギーによる発電を推進してきた。EU統計局によれば、2019年時点でEUの発電量の15%を再生可能エネルギーが占めており、その比率は石炭や原子力を上回っている。

日没時に風力タービン農場で働く若いメンテナンスエンジニア
写真=iStock.com/BulentBARIS
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しかしながら、水力や風力、太陽光といった再生可能エネルギーの発電量は天候に左右されるため、安定性に欠ける。今年のヨーロッパは天候に恵まれず、そのことが再生可能エネルギーによる発電の障害になっている。再生可能エネルギーによる電力の供給が減少したことが、年明け以降の電力価格の上昇をもたらす大きな原因になっている。