摂食障害を克服できた人たちの唯一の共通点

「摂食障害は、どうすれば治りますか?」という質問もよくいただきます。

私は回復した方のお話を聞くこともよくあるのですが、きっかけは人それぞれ異なるものでした。誰かがうまくいった方法でも、他の誰かには合わないこともあり、人生の数だけ回復方法が異なる、と言っても過言ではないと思います。

でも、唯一共通していることは、「○○であるべき」から距離を置き、ご自身が自分なりの人生を選択していったことかもしれません。

私に転機が訪れたのは、とある会社で働いていた時のことでした。当時の私は、過食症に悩んでいた時期で、なるべく人との関わりを避け、うつ状態のように喜怒哀楽の感情がなくなり、何をしても心から楽しめなくなっていました。

取り組んでいた仕事は、黙々とプロフィールデータを処理する仕事でした。たくさんの人の顔写真と全身写真・スリーサイズなどを規定のデータにまとめていくのですが、それを毎日眺めるうちに、人々の顔や体が一人ひとり異なり、同じ人は1人もいないということを、改めて感じたのです。

そしてプロフィール写真なので、基本的に誰もが明るいイメージで写っていて、ぽっちゃりしている女性も笑顔の写真でした。「あれ?」と思いました。「こうして笑顔で、幸せな人生を送っている人もいるのかもしれない」ということに気付いた時、心がグラッと動きました。

たくさんの人のポートレート
写真=iStock.com/martin-dm
※写真はイメージです

「太っていてはだめ」と自分で自分を否定していた

それまでずっと私の中で、ぽっちゃりしている女性=幸せになれないというネガティブなイメージがあったのです。ダイエット広告のビフォーのネガティブな写真や、バラエティ番組でいじられたりするイメージです。

そして、「そういうマスメディアや人々が作るネガティブなイメージを、私はずっと内面化して生きてきたのかも」「このまま毎日、自分の体型を気にして苦しむ日々を、おばあちゃんになるまで一生続けていくの?」「それってすごく人生を無駄にしてるかもしれない」と自問自答していったのです。

確かに、太っていることで嫌なこともありました。でも、「太っているから人生がうまくいかない」「痩せないと人生は良くならない」と言い聞かせて諦めてきたのは、ほかならぬ自分自身だということに気づいたのです。振り返ってみると、自己否定してきて何も良いことがありませんでした。

私にとっては、心に稲妻が落ちたような、大きな気付きでした。