新型コロナウイルス禍のストレスで食べられない、あるいは食べても吐いてしまうといった摂食障害になる子供が増えている。10~20代にかけて約10年間、摂食障害に苦しんだモデルの吉野なおさんは「当事者は『○○であるべき』と思い詰め、自分を否定してしまっていることが多い。親や周囲の人が、そんなに完璧じゃなくてもいいんだよと教えてあげるのが大切だ」という――。

食べることを極端に嫌がる子供の心理とは

コロナ禍の休校中に過剰なダイエットを始めたり、食べることを拒否してしまったりする小中学生が増えているというニュースを目にしました。日本摂食障害協会の報告によると、2020年に摂食障害を発症した小中学生は例年と比べて約2倍に増えたそうです。

「子供がダイエットする必要なんてないよ」「しっかりご飯を食べよう」と、大人が伝えることで解決できればいいのですが、なぜそのような状況に陥ってしまうのでしょうか。

私は、プラスサイズモデルという大きいサイズのファッションモデルをしています。

吉野なおさん
提供=吉野なお
プラスサイズモデルとして活躍する吉野なおさん

でも実は子供の頃から太っていた自分のことが大嫌いでした。小学生の頃にはすでに「痩せたい」という気持ちが芽生え始め、高校生の頃に始めた極端なダイエットをきっかけに摂食障害を経験しました。体重変化の振り幅は30kgもあります。

身も心も疲れ果て、20代半ばに回復するまで何年もずっと「普通に食べること」に嫌悪や難しさを感じて生きていたのです。死んでしまいたいと思うほどつらかった時もあります。

そんな経験を経たからこそ、コロナ禍でもある今、子供たちが過剰なダイエットや摂食障害に陥っていく理由も、なんとなく理解できます。

私にとって摂食障害は「生きづらさをどうにかしようとした表れ」だったからです。

今は、人と一緒に楽しく食事を楽しめることが幸せなことだと思います。

食べることに問題を抱える子供たちについて、経験者である私なりの視点でお話していきます。

他人に気を使い、自分に厳しい人がなりやすい

摂食障害の症状を大きく2つにわけると、極端に食べなくなる症状(拒食症)と、逆に食べすぎてしまう症状(過食症)があり、症状が現れるきっかけは、人それぞれ異なります。

ダイエットがきっかけで始まることも多いですが、マラソンやバレエなどのスポーツで減量を促された経験や、受験勉強に夢中で食べることがおろそかになり、たまたま体重が減っていたことに喜びを見いだし、拒食症になっていくケースもよくあるようです。

いずれにしても、食べることや体重・ボディイメージの捉え方に偏った認知のゆがみができています。

一般的に、痩せている=きれい・かわいい・憧れ・健康など、ポジティブな意味を持たされる社会影響も大きいと感じます。

一概には言えませんが、今まで私が出会ってきた摂食障害の方たちは、優しくて良い人、自己犠牲もいとわず頑張るタイプ、他人に対してはとても気を使うのに自分に対しては厳しい、困った時は誰かを頼りにするより1人で抱え込んでしまう……という印象です。そして、本当はものすごいポテンシャルを持っているのに、本人がそれに気付いていないということもよくあります。