自分の本心を大事に行動してみて分かったこと

その気付きがあってから、少しずつ自分の本当の気持ちを受け入れてみる練習をし始めました。

食べ物を食べるときは、カロリーや太りやすさなど「こうでなければいけない」という情報を気にするのではなく、自分が今何を求めているのか、何が必要ないのか、本心に従って食べるようにしました。

服についても、痩せた時に着ていたものを全て処分しました。見る度に「これを着るためにまた痩せなくちゃ」と落ち込む気持ちになっていたからです。少しもったいない気もしましたが、服のトレンドは変わりますし、もしいつかサイズダウンしたら、その時にお気に入りの服を買えばいいと思ったのです。

そして、ダイエット情報を追うことをやめ、ダイエット商品などを極力視界に入れないようにしました。それらの情報も、落ち込みやすいトリガー(引き金)になっていることに気付いたからです。

そんなふうに、とにかく自分を不快にさせるものから距離を置いて、「今の自分」が自由に生きやすくなることを大事にしました。

「太っている自分」を受け入れて仕事にした

数カ月後、気付くと普通に食事が食べられるようになっていました。強い痩せ願望も過食症状もなくなり、体重も落ち着き、心の中に喜怒哀楽の感情も戻ってきました。

何年も悩んでいた苦しみからやっと抜け出したのです。まさか過食症が改善すると思っていなかったので、自分でも驚きました。

ずっと自分の本心を後回しにしてねじ伏せてきたから、過食症という形で苦しみが出てきていたように感じました。「私なんてどうせ……」という自己卑下や自暴自棄な考え方をやめ、だんだんと自分の視点で物事を捉えられるようになりました。

でも、今度は対人関係でトラブルがあった時に、抑えきれないほどの怒りが湧いてきてしまったのです。それまでの私なら、過食をすることでネガティブな感情を抑え込んでいましたが、どうすればいいかわからなくなってしまいました。

そこで、心療内科のクリニックでカウンセリングを受けてみました。

カウンセリングを重ねるうちに、私は子供の頃からずっと「自分がどうにかしなきゃ」と背負い込み、自己犠牲をしなければ愛されないと思って行動してきたことに気付きました。そして、無理に頑張らなくても、実はすでに自分を受け入れてくれている人は周りにいたことにも気が付きました。

摂食障害を克服した吉野さん
提供=吉野なお
摂食障害を克服した吉野なおさん

そうして前向きに生き始めたとき、偶然プラスサイズモデルの仕事をすることになったのです。昔は「太っている自分が嫌い」と思っていた私が、今ではこの体型ならではの仕事をしているなんて、思いもよらない人生になりました。