聞こえた順に理解することが、英語力の基礎になる
「なぜ、翻訳家がリスニングを重要視するの? 英語の文章を日本語に訳すのが仕事なのに……」という声が聞こえてきそうですね。私がそう確信する理由は「英語を聞こえた順に理解することが、すべての英語力の基礎になるから」です。
英語を「読む」「書く」「話す」というスキルの土台に「リスニング力」がどっしりと構えているイメージです。
リスニング力の基礎がしっかりしていれば、長文の英語であっても、正確に読み取ることができます。逆に、リスニング力が不安定だと、英文を読んだときに、日本語の語順に頭の中で置き換えようとしたり、先回りをしたりして、意味を取り違えるといった不具合が起こりやすくなるのです。
私は20年以上にわたって、「大量の英文を読んで、正確に日本語に訳す」という作業を仕事として継続してきました。その経験から、リスニングこそが英語力の要だと実感しています。
リスニング力がつき、「英語を聞こえた順に理解する」ことができると、「英語の語順で考える」ことが自然とできるようになります。つまり英語のアウトプット、「読み書き」がスムースにできるのです。
では、そんな大切なリスニング力を身につけるにはどうすればいいかと言えば、「親が英語の音声を流す」、それだけなんです。
最強のオススメCDは「マザーグースの歌」
さあ、英語の音を聞かせましょう。ここで大切なのは、お子さんを英語嫌いにしないこと。だから、勉強のテキストのような内容ではなく、さりげなく耳に入ってきて、BGMのように楽しく聞けるものを選ぶようにしましょう。
最初に聞かせたいのが「英語の歌」のCDです。英語の音を耳に入れるのが大きな目的なので、ママパパの好きなミュージシャンの曲をかけてもOKですが、メインでは子ども向けの歌を使うことを推奨します。
これには3つの理由があります。
1つめは「歌詞が子ども向けであること」。使われている単語や文章がシンプルで、子どもが会話に応用できる表現が多く、文法の基礎も耳から覚えることができます。また、シンプルな歌詞がわかりやすいリズムに乗っていますので、英語のフレーズの区切り方の感覚が身につきます。“I have a dream.”という文章なら、4拍子で、“I(1拍)・ have(1拍)・ a dream(2拍).” である、という流れが、歌だと自然に聞えてくるのです。
2つめは「音域が子どもに合っていること」。日本のわらべ歌のCDでもそうですが、女性のやさしい声で語りかけるように歌っていることが多いのは、幼い子どもが聞き取りやすく、真似しやすい音域であるからです。
3つめは「文化も学べること」。歌詞には、その地域の文化が反映されています。英米のキッズが必ず知っている定番の歌を知っておくと、将来的にコミュニケーションに役立つ日が来るかもしれません。
この3つの点を踏まえて、子どもの歌のなかでも、特におススメしたいのが「マザーグース」です。マザーグースは英語の伝承童謡で、「ナーサリーライムズ」とも言われています。イギリス発祥のものが主ですが、アメリカ発祥のものもあり、英米で親しまれています。「ハンプティダンプティ」「ジャックとジル」「ロンドン橋落ちた」など、なんとなく聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。