「ニュース女子」が放送史に残した汚点

「ニュース女子」という東京メトロポリタンテレビジョン(TOYO MX、以下MX)のニュースバラエティー番組を覚えているだろうか。

2017年1月、沖縄の米軍基地反対運動を取り上げた特集が「虚偽報道」「偏見報道」と指弾され、放送倫理・番組向上委員会(BPO)から「人権侵害」と認定された、いわくつきの番組である。

この番組で名誉を傷つけられたとして人権団体の辛淑玉共同代表が番組の制作会社などに1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁が9月初め、当該番組を「真実性に欠ける報道」「裏付けのない取材」と断定、名誉棄損を認めて、制作会社に損害賠償として550万円という名誉棄損訴訟では異例ともいえる高額の支払いと、謝罪文の掲載を命じる判決を下した。

訴えられたのは、ヘイト問題で物議を醸すトップが率いる化粧品大手DHCの子会社「DHCテレビジョン(旧DHCシアター)」。と、番組の司会を務めた長谷川幸洋・東京新聞論説副主幹(当時)。

だが、「ニュース女子」は、DHCがスポンサーとなって番組枠を購入して放送するいわゆる「持ち込み番組」であり、東京地裁の判示は、この番組を漫然と放送したMXに向けられたものでもある。

訴訟に絡んで、放送界では「ヘイトに対する認識不足」「番組考査体制の不備」「大スポンサーへの忖度そんたく」などの課題も浮き彫りになった。公共財である電波を利用する放送ジャーナリズムのあり方に、司法が警鐘を鳴らしたともいえる。

判決は同時に、ウェブジャーナリズムに対しても、人権報道をめぐる新たな課題を提起した。

放送から4年半以上、提訴から3年余も経過しているが、ニュースのバラエティー化が広がる中で、名誉棄損を認定した判決は「放送と報道の重み」をあらためて思い起こさせた。

判決を受けて、放送史に汚点を残した「事件」を検証してみる。