病院選びや病名告知については、長男に主導権

母には白血病とは言わず「血液の病気」とだけ告げていた。“余命わずか”であることも知らせない。

知賀子さんの弟の強い希望だったという。

母(鈴子さん)には、長女、そして次女の知賀子さん、弟(長男)の3人の子供がいる。夫はおよそ30年前に心疾患で亡くなっている。

「朝食の時間になっても起きてこなかったので、母が様子を見にいくと、父が亡くなっていたのです。突然死ですね。私はすでに実家を出て一人暮らしをしていたのですが、母から『すぐ戻ってきて。お父さんが息していない』と電話がかかってきました」

夫の生前、実家は二世帯住宅に建て替えられ、やがてそこに長男夫婦が住むようになる。1階が母、2階が長男夫婦の住まいとして、この20年間は暮らしてきた。

そのため、母の病院選びや病名告知については、長男が主導権を握っていた。その長男が「(母に)病名を伝えない」と言ったら、知賀子さんは黙って従うしかない。

問題は「訪問医探し」と「看護の割り振り」

片親がすでに亡くなっていて、もう片方の親の看取りをする時、子供が複数人いると、誰が物事の決定権をもつのかが難しい。

「年末年始は家で過ごしたい」という母の希望もあり、2016年12月下旬に退院した。無事年越しはできたものの、年明けにインフルエンザを発症して緊急入院。しばらくして退院するものの、今度はふとしたきっかけから鼻血が止まらなくなった。病院を受診させようとすると、母は「あの病院はいやだ」と言い、病院側も「来るな」という態度。しかし症状が進んだ白血病の患者を診てくれる病院がほかにない。

「もう家で診るしかないだろう」

2017年1月末、長男がそう決断したため、次女の知賀子さんも、長女もそれに従った。

問題は「訪問医探し」と「看護の割り振り」だった。

その頃、長男の同級生の身内が、実家から近くの場所で訪問医をしていることを知ったという。「白血病患者でもOKか?」と問い合わせると訪問医から了承を得られたため、何度か入院していた病院からの引き継ぎをお願いする。