「もう一週間ももたないと思うから」と緊急入院

終末期を病院で過ごそうとしたのに追い出され、サポート者に恵まれず、“通い”で母親を家で看取った人もいる。

都内在住の小平知賀子さんの母、鈴子さん(享年84)は2016年10月に白血病を患っていることが発覚した。

小平鈴子さんの白血病が判明しての緊急入院。このときは医師から「帰宅できない」と言われた。
鈴子さんの白血病が判明しての緊急入院。このときは医師から「帰宅できない」と言われた。

「手がしびれるというか、母は自分で『脳梗塞』を疑い、かかりつけの病院に行ったんですね。そこから近所の大きな病院にまわされて一週間入院しました。退院後、脳梗塞というより脊髄に問題がありそうだとなり、今度は大学病院の受診を勧められたのです。

そして11月の初めに白血病と診断され、医師から『もう一週間ももたないと思うから』と、緊急入院。この時、家族はもしかするともう自宅に戻れないかも、と思いました」

2週間の入院を経ると、いったん容体が落ち着いたため、退院が可能になった。だが、その直後から下痢がひどくなり、12月中旬に再入院になってしまう。

担当医からは「早く退院して家で看取ってほしい」

「再入院の際、抗がん剤の副作用を母が訴えていたこともあり、担当医から『早く退院して家で看取ってほしい』というニュアンスのことを言われたんです」

知賀子さんは担当医に詰め寄った。

「体制が整っていません。いきなりそんなことを言われて、家で看取れると思いますか」

医師は黙って顔を背けた。

その後、表立って「退院」を求められることはなかったものの、病院側と意思疎通がとれなくなったという。退院を求めた医師はあとから病院の副院長であることがわかり、知賀子さんが病院に行った際に挨拶をしても無視されてしまった。

「私が病室をたずねると、完全看護なのに母の分の料理だけ出されていないことがありました。指摘すると、『あら一つ残っていておかしいと思ったのよ~』という具合で。母は耳は遠かったですがボケているわけではない。次第に『この病院はいやだ』と言うようになりました」(知賀子さん、以下同)