どこからどう見ても荒唐無稽な絵空事のオンパレードだ。だが、読み進むうち、このリストの本当の価値は別のところにあることに私は気づいた。つまり、人がこの世に生まれてきたことの意味まで考えさせられてしまうのだ。私は思った。これを女房と2人で訳したらどうだろう。さっそく国際電話をかけて、女房に言った。

「これ、2人で訳さない?」

女房は間髪入れずに答えた。

「すごくいいアイデア。やろう!」

女房と私はリストを半分にして3000ずつを訳し、編集は私が担当した。訳した願い事を改めて眺めてみると、同じ内容のものも少なくなかった。私は一晩で全項目に目を通して、重複しているものやアメリカ人にしかわからないギャグを除き、一見同じでも微妙に意味の異なるものは削らずにあえて一緒に並べた。

気に入ったものはレイアウトで文字を大きくして目立たせた。たとえば、「お金目当てに結婚したのに、結婚相手に恋してしまう」「ピエロであり続ける」「何もしないで1日を過ごす」なんてささやかなのも悪くない。なかでも1ページ丸々を使って特大の文字にしたのは、「誰かのヒーローになる」という願い事だ。誰かは奥さんでも、息子や娘でも、それ以外の誰かでもいい。一生の間に「誰かさん」のヒーローになんてなれたら、男冥利に尽きるし、それだけで生まれてきた甲斐がある。

こうして編集し直したリストに、女房と私は最後に自分たちの200の願い事を追加した。女房はあっという間に100の願い事を書いてメールで送ってきた。私ももちろん願い事を100挙げるつもりでいたが、女房のリストを見て気が変わった。その結果、女房と私の200のやりたいことリストはこんなふうになった。

「千(千秋):いつもニコニコしていたい。万(万起男):ニヒルな男と言われたい」「千:地球の重力から解き放たれたい。万:地に足をつけて生きたい」「千:自分を客観的に見つめたい。万:周囲の人々を客観的に判断したい」「千:いつも生き生きとした夫を見ていたい。万:女房より先に死にたくない、……女房を孤独にしたくない」