過去の問題は捨て他人と同じではなくもっと上を目指せ

<strong>ピーター・F・ドラッカー</strong>●1909年、オーストリア生まれ。独フランクフルト大学在学中から、経済記者などを経験した後に渡米。米ニューヨーク大学教授などを経て、71年、米クレアモント大学大学院教授。現代経営学に多大な影響を与え続けた。著書に『経営者の条件』『現代の経営』など多数。2005年没。(Time&Life Pictures/Getty Images=写真)
ピーター・F・ドラッカー●1909年、オーストリア生まれ。独フランクフルト大学在学中から、経済記者などを経験した後に渡米。米ニューヨーク大学教授などを経て、71年、米クレアモント大学大学院教授。現代経営学に多大な影響を与え続けた。著書に『経営者の条件』『現代の経営』など多数。2005年没。(Time&Life Pictures/Getty Images=写真)

ドラッカーは毎年夏になると2週間ほど、自由になる時間を過ごすことにしていた。前年の夏以降の1年を反芻するためである。その間に熟考して、次の1年間の優先順位を決める。

一般に、順位を決める際のいちばんの問題は、自分自身で決断するのか、それとも状況の圧力で決まってしまうか、そのちがいにある。状況に流されるままに、なにを優先させるかを決めることになると、当然、それまでの仕事の積み重ねが台無しになる。目前の切迫している仕事が優先されて、明日への展望も開けない。

優先順位の決定は、ドラッカーのキャリアのなかの一大事業であった。そのためにたっぷり時間をかける。ただし、その通りに生きられたことは一度もない。途中で順位が変わる。ドラッカーにしてこうである。それほど難しい。しかし順位決定の試みをやめようとしたことはない。完全を求めて努力するという、ゆるがない決心をもちつづけたからである。

優先順位の決定に関して、もっとも重要なもの、それは勇気であると、ドラッカーは断言する。勇気をもって決め実行することは、どんな優れた分析にも勝る。これは時間管理全体にいえることである。優先順位を決め、不要な仕事を切って捨てるのにも、本来足りない時間からまとまった量をもぎとるのにも、勇気をもって処さねばならない。

彼は、優先順位の法則として、つぎの4つを挙げる。