消費者イノベーターが製品革新のために使っている金額も注目に値するものだった。我々は、各国のメーカーが消費財向けに研究開発投資している金額を推計し消費者イノベーションのために使われた金額の推計値と比較した。

特に注目すべきは、英国で、メーカー投資額の144%(約5000億円)、つまりメーカーの約1.4倍の金額分が消費者により製品革新のために使われていた。それに対して米国と日本はそれぞれ33%と13%だった。割合としては低い数字だが、絶対額では約2兆円(米国)と約6000億円(日本)と決して少なくない金額が消費者イノベーションのために投下されていることが明らかになった。

こうして製品創造や改良という形で多くの消費者がメーカーと関係のないところでイノベーションをしていること、そしてそのために無視できない額のお金が使われていることが調査でわかった。

では消費者が生み出した製品はその後どうなっているのだろうか。本連載の1回目でも英国の調査結果として触れたが、消費者イノベーションのほとんどはそれを実現した消費者個人の範囲にとどまってしまっている。調査によれば英国で17%、米国、日本にいたってはそれぞれ6%、 5%しか消費者イノベーター以外の人や企業によって同等のものが作られていない(消費者イノベーターのアイデアを取り込んだ製品が商品化されていない)。

別に消費者イノベーターがそのことを拒んでいるわけではない。当該イノベーションに関する知的財産保護の申請をしている人はごくわずか(英国2%、米国 9%、日本0%)で製品内容について積極的に開示している人も少なからずいる(英国33%、米国18%、日本11%)。にもかかわらず消費者イノベーションが市場に登場している割合は低いのだ。