あしらいは花ではなく季節の野菜を添えて

あしらいとは器に盛りつけた料理を引き立てるための野菜類もしくは花、葉っぱのこと。もっとも私は花は一切、使いません。

そうですね、たとえば焼き物をお出しする時は、あしらいを置く位置を見ます。そして、気に入らないところがあればちょこっと変えてみる。あしらいの位置をほんの少し変えただけで皿の景色はがらっと変わる。ですから、あしらいは大事です。私は焼き物とあしらいだけ一七〇種類ほど集めた本を作ったことがあるほどです。

ご家庭でお客さまをもてなすとします。ぶりの照り焼き、さけの切り身などをいい器に盛って出しただけではちょっと足りない感じがする。そこに、あしらいを添えるだけで、お客さまは食欲がわいてくる。

そして、あしらいは季節感を盛り込むもの。春なら山菜、夏ならば、伏見唐辛子や枝豆といったように、あしらいで季節を表すことができます。

あしらいをした盛り付け
撮影=牧田健太郎

料理を映えさせる3つのあしらい

①はじかみ生姜しょうが
葉のついた新生姜を甘酢に漬けたものです。普通は焼き物の横に一本、添えるのですが、私は刻んで三つ葉と合わせたりもします。はじかみの赤と三つ葉の緑がバランスよく、見た目がおいしそうになるんです。

胡麻和ごまあ
ほうれん草やいんげんはおひたしより、胡麻和えが合うと思います。ただし、量はほんの少しです。あしらいは小鉢とは違いますから、あまりたくさんつけると、かえって不格好になってしまう。

③甘煮
さつま芋や栗、柚子ゆずを甘く煮含めたものも時々、あしらいに使います。柚子は「車柚子」といって緑の柚子を輪切りにして御所車の車輪をイメージしたものです。

私はあしらいを考えることが楽しみのひとつになっています。材料を眺めていると、遊び心が湧いてきます。

野地秩嘉『京味物語』(光文社)
野地秩嘉『京味物語』(光文社)

開店した頃のことです。うちにいらした小原流の御宗家から、「西さん、ひとつお願いがあるんだ」と言われたことがあります。

「実はこの頃、料理屋さんで桜の花や菊の花を盛りつけやあしらいに使う人が多い。それはそれで構わないのだが、どうも気になるんだ。お皿の上では料理が花だ。料理自体が主役なのだから。できたら、花は盛りつけには使ってほしくない。枝、葉で表現してほしい」

もともと私は料理に花をあしらった盛りつけはやっていませんでしたが、その方がおっしゃったように、料理人は料理を花と思わなければいけません。以来、そのことは守り続けています。

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